小諸の本店は今年創業100年を迎えるとか。

［小宮山店長］はい、私で四代目です。

大学を卒業後すぐ、跡を継いだのですか。

いいえ、当時はレーシック手術とかが出てきた頃で、メガネってなくなっていくものだと思っていたんです。継ぐ気は全くなく、横浜で消防士を9年間やっていました。

どうしてその後、継ごうと？

親父も60を越えていたんで、このままだとつぶれてしまうなと。レーシックする人もそこまで増えないし、メガネを必要としている人がまだまだいるんだなと。小諸の本店で働きながら、東京の眼鏡学校に2年通って、SS級認定眼鏡士の資格を取りました。

メガネ屋さんて、資格がいるんですか。

いりません。メガネ屋さんの数に比べれば、資格を持っている人は圧倒的に少ないんですよ。

資格がなくてもできるのに、資格を取ったのはどうしてですか。

経験や勘だけだと、どうしても親や店独自のやり方になってしまうので、一度基礎となる世界共通の標準的な方法を学びたかったんです。

お店に入ってわかった苦労、改めて感じたことはありましたか。

メガネの認識が、お客と店側では全く違うことですね。メガネって、どこで買っても同じと考えている方が圧倒的に多くて…。

今はショッピングモールなどにも量販店が入って、安くお手軽にメガネが買えるようになっていますよね。

そうですね。ただ同じ土俵で、同じものを売るわけではないので、私たちはあまり気にはしていません。

同じメガネでも別物、という考えですか。

はい。私が以前住んでいた東京や横浜にも、街のメガネ屋さんはあって、どうして潰れないのか、見て回ってわかったことがあるんです。

え、何がわかったんですか。

レンズを一人ひとりに合わせる、技術の高さが違うということでした。

技術…ですか？

はい、今は機械が良くなって、中を覗いてもらって、ボタンをピっと押せば、遠視か近視か乱視か、ある程度のことは数値でわかるんです。

それなら、量販店と技術の差は出ないように思うのですが。

はい、そこまでの検査はどこでも行います。うちでは、そこからさらに両眼視測定でその人ごとの適応能力を見て、お客さんとコミュニケーションしながら、最適なレンズを選んで行きます。

もう一段階あるわけですね。

はい、床屋みたいに、最初に希望を伝えて、座っていたら何十分後かにばっちり、というわけにはいかないのがメガネです。検査には、お一人約30分ほど頂いています。

店内見渡す限りメガネ、メガネ、メガネですけど、どれくらいの本数がありますか。

3000本以上ですね。

イチローのヒット並みですね（2016年7月11日現在、メジャー通算2990本）。選ぶのに迷ってしまいそうな気がするのですが…。

その人の眉毛や骨格から、合う形って結構絞れてしまうんですよ。3000本あっても、実際はこれしかなくて大変だなというのが、正直なところです。

中には、似合っていないけど「この形をつけたい」という人もいるのでは。

そういうときは「ミスマッチじゃないですか」って、端的に言っちゃいますね。お世辞はうまくないので…。

なかなか勇気がいりますね。

でも、最終的には喜ばれることが多いです。メガネって、ネガティブなイメージがありますけど、自分の顔の良くない所を隠して、良いところを伸ばす道具でもあるんです。

メガネをかけると、ガラッと印象が良くなる人、いますもんね。メガネにも、サイズってあるんですか。

フリーサイズだと思っている方がほとんどなんですけど、骨格や鼻幅は人それぞれ違います。フィッテングしてもらって、世界に一つだけのその人に合う一本を提供します。

軽井沢店は、いつもお一人で接客しているのですか。

はい。二人のお客さんが一度に来ると、慌ててしまうため、事前に電話予約してもらえるとありがたいですね。あ、あと天気の悪い日は、お客さんが少ないのでおすすめです。

なるほど。一対一の関係を大切になさっているのですね。

検査から納品まで、私が責任をもって対応します。

ところで、明浩さんは、いつから眼鏡をかけるようになったのですか。

私は高校から。そのときばかりは、メガネ屋で良かったなと。親父に検査してもらって、当時は怪しい検査だなと…。中身を知ると、こういう意味があったのかと。

はい、今日はどうもありがとうございました。