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軽井沢新聞 スペシャル
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Kaleidoscope 軽井沢が見える万華鏡 No.10

Kaleidoscope

「移り住んで来る人が増えたけど、軽井沢がどういう所なのかを知らない人が多い」と嘆く別荘住民。「地元の人たちこそ分かっていない」と移り住んで来た人たち。「軽井沢に来ているのに、ここが別荘地だということを知らない人もいるんですよ」と、最近の観光客に観光案内所の人も呆れ顔。「仕方ないさ、時代が変わったんだから」で済まされていいのでしょうか。

 「もし、この町が『軽井沢』というブランドを売りに出したら、『買います!』と手を上げる市町村はたくさんいるでしょう。そのくらい軽井沢のブランドは価値があります。トヨタもコカコーラも自社のブランドを守るために多大な費用をかけています。しかし、この町はそのブランドを守ることをしていません。だから、私はもう、軽井沢というブランドに頼ることはやめます」。きっぱりと、こう言い切ったのは10年前の星野佳路氏(星野リゾート社長)。この言葉は衝撃でした。あまりにも的確な表現だったからです。数年後、彼が造ったホテル・ブレストンコートには「軽井沢」が付いていませんでした。「軽井沢というブランドに頼らず、独自の努力で商売をすべきだ」というのが佳路氏の考えなのです。それはまた「軽井沢町はブランドを守る努力をせよ」というメッセージでもありました。

 昨年、軽井沢町は売却された旧スイス公使館別荘(深山荘)を購入し、保存することを決めました。これは「軽井沢のブランドを守る努力をした」と高く評価したいと思います。軽井沢にはかつて、大使館・公使館の別荘がたくさんありましたが、堀辰雄の名作『美しい村』に出てくるチェコスロバキア公使館別荘も数年前に壊され、今やこの深山荘しか残されていません。この別荘を保存しなければ、「軽井沢に大使館・公使館の別荘があった」と言っても、それを証明するものは形として存在しないことになってしまいます。保存・維持するにはお金がかかるので反対した人もいたようですが、ブランドを守るためにお金がかかるのは当然のこと。惜しんではだめなのです。それによって守られる価値はその金額の何倍にもなるのですから。

 8月中旬に町内の書店へ行ったとき、レジの後ろに書かれた新刊書売上げベストテンを見て驚きました。村上春樹著『IQ84』や芥川賞受賞作『終の住処』を抜いて、7月下旬に発行したばかりの宮原安春著『リゾート軽井沢の品格』が1位になっていたのです。

 「仕方ないさ、時代が変わったんだから」と嘆くことはない。まだ、まだ軽井沢の原点を知りたい人はたくさんいる、と嬉しくなりました。

(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)

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