モノトーンに落ち着いた冬枯れの森。その中で、鮮やかな黄緑色が目に飛び込んできました。葉を落としきった枝に、一枚だけ緑の葉がぶらさがっています。「冬なのにどうして?」と思って近付いてみれば木の葉ではない。それが「山かます」との遭遇です。  山かますの正体は、ウスタビガというヤママユガ科のガの繭(まゆ)です。繭の形が、かつて塩や穀物などを入れた「かます」というむしろを二つ折りにした袋に似ていることから、こう呼ばれています。  繭の美しい緑色は、夏の間周りの葉の色にとけ込んで、中の蛹を守っていました。いま繭の中をのぞいても、あるのは蛹の抜け殻だけ。じつは、繭の主はすでに秋に羽化しているのです。  ウスタビガの成虫が、冬を生き抜くことはありません。交尾して産卵すると死んでしまいます。時々、見つけた繭に黒っぽい小さな粒が付いていることがあります。ウスタビガの卵です。羽化したメスの飛ぶ力が弱く、自分が這い出した繭につかまったまま産卵したのです。  ウスタビガの命はこうして卵に引き継がれ、越冬します。卵は、厳しい冬を凍り付くことなく乗り越えられるでしょうか。真冬の小さな発見が、命のリレーを物語ってくれます。

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写真上:ウスタビガの鶴田繭

写真下:ウスタビガの成虫

 

 


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