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軽井沢新聞 スペシャル
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作家 森 瑤子 さん

1707_special01.jpg 作家 森 瑤子 さん

1枚の写真がある。石を積み上げた大きな暖炉、その前でイスに座ってほほ笑むジーンズ姿の女性。1978年、処女作『情事』ですばる文学賞を受賞し、15年の間に約100作を残して疾風のごとく去った作家の森瑤子さんのありし日の姿だ。

当時、森瑤子さんは女性の愛や生き方を描いた都会的なセンスの小説が注目を集め、作家としてだけでなく、そのファッションやライフスタイルでもカリスマ的な存在になっていた。夏の軽井沢で見かける彼女はトレードマークのヘアバンドと個性的なスタイルがよく似合う華やかなイメージだった。

 そんな印象を受けていたので、取材に訪れたときのシンプルなジーンズ姿や、普通の主婦としての話しぶりは意外だった。  「朝は早いのよ。東京にいても、子供たちが学校へ行くときは6時半には起きて、朝食やお弁当を作るの。仕事は午前中に済ませて、午後はテニス」。20年前から訪れていた軽井沢ライフにテニスは欠かせない存在だったようだ。取材は軽井沢の話から、主婦作家としての仕事と家事の両立などへと広がっていった。

 避暑地軽井沢100周年記念の1986年の夏、軽井沢会の集会堂で開かれた『古き良き時代を偲ぶパーティー』では、三笠宮様や徳川喜和子さんらに交じって踊る森夫妻の姿が人々の視線を集めた。フランスから取り寄せた美しいアンティークドレスの瑤子さん、白いジャケットに蝶ネクタイが似合う夫のブラッキンさん...二人が踊ると映画のワンシーンのように素敵だったことを思い出す。

1993年7月、「森瑤子さん亡くなる」との訃報がテレビや新聞で報じられた。亨年52歳。あまりにも早い死だった。

たくさんの作品を執筆し、夏の楽しい日々を過ごした彼女の別荘(旧サロモン別荘)は国の有形文化財として登録され、今はカフェ『涼の音』として人気を集めている。そんなことを想いながら、今、私はかつて取材した大きな石積みの暖炉の前でコーヒーを飲んでいる。不思議な時の流れを感じながら...。

(記事:広川小夜子)

もり・ようこ(1940~1993年)
作家・静岡県生まれ。ヴァイオリンを学び、東京芸術大学器楽科へ進む。24歳のとき英国人と結婚し、37歳で書いた『情事』がすばる文学賞を受賞。52歳で亡くなるまでの間に、100冊を超える著作を残し、作品は20回以上テレビドラマ化された。『風と共に去りぬ』の続編『スカーレット』を翻訳したことでも知られている。
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