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新聞記者から転身し、社会保障のエキスパートに

武蔵野大学大学院人間社会・文化研究科教授 川村 匡由 さん

川村 匡由 さん 川村 匡由 さん
 社会保障、老人福祉、地域福祉の専門家として、これまでに著した書籍は130冊以上。大学院教授のほか、複数の自治体で福祉関連の委員を務め、全国各地で講演活動も行う。
 読売新聞の記者時代に書いた年金の本が売れ、大学の非常勤講師や地方講演の依頼が相次いだ。

「年金制度の大改革(1986年)の頃で、私の仕事と世間の関心が一致したんですね」

 日本福祉大学中央福祉専門学校(名古屋市)から専任講師の要請があり、42歳で記者を辞め、研究者の道へ。その後、つくば国際大学から武蔵野女子大学(現武蔵野大学)の教授に。ここ10年は毎年、スイスの農山村の実情を調査するため、現地を訪れている。著書『スイスにはなぜ「限界集落」がないのか』(農文協)を来年1月に刊行予定だ。
「スイスの山岳部では、農産物の市場価格に関わらず、農業所得の100%の直接支払いを政府が補償している。農業者の経営が安定し、都市部よりも農山村の方が人が増えている」

 東京都武蔵野市の事務所を、高齢者が情報共有し、交流できる地域サロン「ぷらっと」として土日のみ開放。年金や介護保険の講座などを行い、5~20人ほどが集まる。

「町会や自治会がない土地柄ですので、地域全体を巻き込んでいくにはまだまだ時間がかかりそうです」  結婚を機に、妻に誘われて始めた山登りに今ものめり込む。8年間で、全国に点在する「○○富士」と呼ばれる135の山を上り、1996年『ふるさと富士百名山』(山と渓谷社)にまとめた。普段の生活から足腰を鍛えるため、階段のあるところではエレベーターは使わない。

「マンションの11階に住んでいたときも、来客と引っ越しのとき以外は階段でした。これまで大病の経験もありません」
 1986年に建てた北軽井沢の別荘を毎年訪れる。来年3月に大学を退職後、北軽井沢中心の生活にシフトし、群馬医療福祉大学に出講するかたわら、江戸時代の浅間山大噴火被災地の復興を題材にした防災福祉の研究書の上梓も計画している。

 1946年生まれ。定年間近のベテラン教授でありながら、入試シーズンは毎年、地方会場の試験監督者を買って出る。

「街の移り変わりの様子を見たり、教え子に会いに行ったり、『ついで』を楽しめるのがいいんですよ」
 上手に時間をやりくりし、人の何倍も楽しもうとするその姿勢に、若さの秘訣を見た気がした。
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