建築家アントニン・レーモンド「軽井沢夏の家」 国重要文化財指定の見通し

 チェコ生まれのアメリカ人建築家アントニン・レーモンド(1888〜1976)が設計し夏の別荘兼設計スタジオとして利用した「軽井沢夏の家」が、国の重要文化財に指定される見通しだ。国の文化審議会文化財分科会が6月23日、文部化学大臣に答申した。指定されれば、町内では1980年5月指定の旧三笠ホテル以来2例目となる。

 「軽井沢夏の家」は真ん中に向かって低くなるV字形の屋根と、屋根に沿った緩やかなスロープ、吹き抜けが特徴。リビングの開口部は柱の内側に、ガラスの引き戸を設置する「芯外し」を採用。ガラス戸を開け放つと、外との空間が広くとれる。文化審議会では「日本建築の様式を折衷させた「木造モダニズム建築」の先駆けとして、歴史的評価が高いもの」と評価された。

 建物は1933年に南ヶ丘に建設され、レーモンドや妻のノエ、事務所の所員らが夏を過ごす別荘兼設計スタジオとして利用。37年、レーモンドのアメリカ帰国の際に売却され所有者が転々としたのち、86年に軽井沢タリアセンを運営する塩沢遊園が譲り受け、塩沢湖畔に移築復元した。現在は、フランス人画家レイモン・ペイネの絵画を展示する美術館として活用している。

 ペイネ美術館館長の藤巻傑さんは「(重要文化財指定に答申されたことは)レーモンドの功績があってのこと。これまで保存してきたことが、指定の一助になったのならば光栄なこと」と話した。

 軽井沢タリアセンでは7月8日から9月18日までの土日祝日(8月はのぞく)、「軽井沢夏の家」のガイドツアーを行うほか、9月23日からは、企画展「アントニン・レーモンド夏の家」展(仮)を実施。ペイネの作品を施設内の睡鳩荘に移動し「雨戸やガラス戸の大部分を開放して、建物本来の姿を楽しんでもらいたい」と藤巻さん。

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ペイネ美術館として使われている、アントニン・レーモンド「軽井沢夏の家」。

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「軽井沢夏の家」の内観。ゆるやかなスロープが特徴的。

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