三井三郎助別荘解体「大きな損失」

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軽井沢最古の和洋館別荘。
 10月4日、静かな別荘地にバリバリッと重機が壁を壊す音が響き渡った。三井財閥の三井三郎助によって明治33年に建築された、瀟洒な洋館の壁はあっけなく壊されていった。



 既に今年1月にヴァージン諸島の法人の手に渡っていたことが6月下旬に分かり、7月上旬、軽井沢文化遺産保存会が新しい所有者へ移築保存したい旨を手紙で伝えた。8月に写真展を開き署名を集めるなど保存運動が展開され、日本建築学会北陸支部が保存要望書を提出する動きもあった。保存会は移築活用の提案を行い、資金の用意も考えていたという。しかし、所有者との直接の交渉ができず、解体に至った。



 所有者が不要とする三井家の備品や家具は町が引き取った。保存会代表の増淵宗一日本女子大学名誉教授は「軽井沢最古の和洋館別荘が取り壊されることは軽井沢町の歴史上、大きな損失。町が所有する八田別荘や旧スイス公使館別荘が活用されていれば、事情は変わったかもしれない」と話し「今後は軽井沢町が歴史文化遺産の保全方法を制度化するなど、もっと積極的に取り組んでほしい」と訴えた。

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