【軽井沢新聞10月号】ヴォーリズが自分のために建てた 浮田別荘が継承・保存へ

 軽井沢会集会堂や睡鳩荘などの建築で知られるW・M・ヴォーリズ。自分自身のために大正9年に建てたコテージ(通称「浮田別荘」)が、新たな家主のもとで保存されることとなった。

 この別荘は「九尺二間の山荘」とも呼ばれ、小さくて便利に暮らせる山荘として実験的にヴォーリズが建てたもの。自然の中で心身を落ち着かせて過ごすためには「見せびらかすような建物より簡素な家を」と説いた。およそ10坪の中にリビングダイニング、キッチン、寝室、バスルームなどを備えた機能的な造りになっている。

 ヴォーリズから画家の浮田克躬に受け継がれていたが、近年は老朽化や解体などが危ぶまれていた。軽井沢町で店を営んでいる夫婦が、この夏、浮田別荘を引き継ぐことになった。「10年前ぐらいから、散歩のたびに気になっていた。軽井沢らしい、かわいらしい別荘。大幅な修繕が必要だが、ヴォーリズが建てたこの家を大切にしたい。いずれは自分が暮らすことも考えている」と、保存し活用していく予定だという。

 歴史的別荘の保存に力を入れている軽井沢ナショナルトラストの柴崎会長は「浮田山荘売却の話が出た時に、滅失の懸念をしていた。私たちは倒木の撤去、購入者探しなど地道に活動し、結果として滅失危機を回避する事ができ嬉しく思っています」と話している。

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築100年以上。ヴォーリズ建築の特徴を備えた浮田山荘。

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