S記者の体験リポート

2105_sp_kuma02.JPG

(キャプション)

樹上に残るクマ棚。

2105_sp_kuma.JPG

(キャプション)

双眼鏡を覗いてクマを探す田中さん。


 クマが多く生息する軽井沢町。ツキノワグマの保護管理活動をしているピッキオに寄せられた昨年の目撃件数は過去20年間で最多の151件だった。軽井沢では話題にのぼることも多いクマ。どんな動物なのか実際に見てみようと同団体のネイチャーツアー「ツキノワグマウォッチング」に4月28日、参加した。ガイドしてくれたのは、ベアドッグハンドラーの田中純平さん。冬眠から目覚め、草木が生い茂る前のこの時期がクマ観察に最も適しているという。

 8時30分、ピッキオに集合し、車で向かったのは群馬県・長野県の県境付近。広く見渡せる崖を目指して3㎞程の山道を歩いていく。対岸の山に出没するクマを遠くから観察するためだ。シカが樹皮を剥がした跡や、クマが樹上でエサを食べた跡のクマ棚など森の中で動物が残した痕跡を教えてもらいながら足を進めた。「木の上は外敵に狙われる危険がないので安心するのでしょう。クマ棚で寝てしまうこともあります」と田中さん。

 歩くこと約1時間、崖に辿り着く。観察のアドバイスを受けて、双眼鏡を使ってくまなく探す。山の中に点々と咲く桜を確認できる。「2〜3市町村移動することもあるクマは植物の運び屋。クマが食べた種が糞から発芽して、色々なところで芽を出します。山の中の桜も、糞から育ったものかもしれません。クマ自身が森を育てているのです」。3時間程探したが、この日、クマは姿を見せなかった。「クマは本来人を襲う動物ではありません。仲間内で食べ物を分け合うなど平和的な一面もあります。岩場でゴロゴロする姿を見たり、自然界での役割を知ることができれば、少しおおらかな気持ちになれるかもしれません。自然やクマを考えるきっかけにしてほしい」と開催した思いを話してくれた。

取材後記

クマの自然界での役割や、愛くるしい一面があることを知った。「共存」について改めて考えなければいけないと感じる1日だった。

関連記事