


藤巻町政10年、住民有志アンケート

渋滞緩和、自然保全に低評価
2011年の初当選以来、今年で在任10年となる藤巻進町長。この間の町政や施策を住民の目線で評価しようと、町内の団体有志らが結成した「軽井沢アンケート調査会(※1)」によるアンケート調査が昨年11〜12月に行われた。
アンケートでは子育て支援や福祉、自然環境、観光経済などの施策、グランドデザインや長期振興計画といった藤巻町政の方針を問う質問が並び、町民、別荘住民らから回答と意見が寄せられた(※2)。
アンケートを実施した同調査会は「これまで住民側から評価する機会がなかったので実施したが、時期的に回収率が悪かった。様々な意見があったので、今後の町政に生かしてほしい」と話している。アンケート結果や寄せられた意見は、近く町長に提出する予定だという。
住民の意見反映させている21%
10年間の町政で「住民の意見をどれくらい反映させているか」という質問では、「(かなり・まあ)反映させている」と思っている人が21%、「(あまり・ほとんど)反映させていない」と思っている人が60%だった。グランドデザインは、「進んでいる」と評価した人は1%、半数以上が「わからない」と回答した。グランドデザインを進めるために設置された風土フォーラムの活動は70%が「わからない」、18%が「成果が現れていない」。
緑地後退への町長発言70%反対、スポーツの町イメージ定着
子育てや福祉、教育、環境など各政策については10点満点で評価。際立ったのは「渋滞対策」と「自然環境」「街並・景観」への低評価。この傾向は「継承すべき軽井沢らしさ」の問いにも現れている。昨年9月の町長答弁に賛同したのは5%だった。「スポーツの町」に10点を付けた人が12%あり、平昌オリンピックでのカーリングがイメージアップに貢献した。
アンケート結果の分析・意見
地域政策が専門の大河原眞美さん(高崎経済大学名誉教授)
今回のアンケートは、回答者の7割強が町民で、子育て支援や教育環境や経済政策については常住の住民の立場から藤巻町政は一定の評価はされている。しかし、町の自然保護対策には不満が大きいことがわかる。別荘所有者だけでなく町民も緑豊かな多様な植物と野鳥が生息する軽井沢の継承を望んでいる。軽井沢町は、2020年からコロナ禍でワーケーションとして大きな脚光を浴び、不動産ブームである。人口増加により緑の空間が減るのは必然というより、50年後も100年後も緑豊かな軽井沢を維持できるように、町民をもっと巻き込んで町の未来像を取り組むことを求められている。
※ 1 軽井沢アンケート調査会...町民有志を中心に、軽井沢町商工会新軽井沢支部、旧軽井沢支部、軽井沢女性会、自然景観会議、別荘団体連合会、青年会議所の有志が協力。
※ 2 アンケート用紙の配布とメール送信などにより調査。回答数 315。
2011年の初当選以来、今年で在任10年となる藤巻進町長。この間の町政や施策を住民の目線で評価しようと、町内の団体有志らが結成した「軽井沢アンケート調査会(※1)」によるアンケート調査が昨年11〜12月に行われた。
アンケートでは子育て支援や福祉、自然環境、観光経済などの施策、グランドデザインや長期振興計画といった藤巻町政の方針を問う質問が並び、町民、別荘住民らから回答と意見が寄せられた(※2)。
アンケートを実施した同調査会は「これまで住民側から評価する機会がなかったので実施したが、時期的に回収率が悪かった。様々な意見があったので、今後の町政に生かしてほしい」と話している。アンケート結果や寄せられた意見は、近く町長に提出する予定だという。
住民の意見反映させている21%
10年間の町政で「住民の意見をどれくらい反映させているか」という質問では、「(かなり・まあ)反映させている」と思っている人が21%、「(あまり・ほとんど)反映させていない」と思っている人が60%だった。グランドデザインは、「進んでいる」と評価した人は1%、半数以上が「わからない」と回答した。グランドデザインを進めるために設置された風土フォーラムの活動は70%が「わからない」、18%が「成果が現れていない」。
緑地後退への町長発言70%反対、スポーツの町イメージ定着
子育てや福祉、教育、環境など各政策については10点満点で評価。際立ったのは「渋滞対策」と「自然環境」「街並・景観」への低評価。この傾向は「継承すべき軽井沢らしさ」の問いにも現れている。昨年9月の町長答弁に賛同したのは5%だった。「スポーツの町」に10点を付けた人が12%あり、平昌オリンピックでのカーリングがイメージアップに貢献した。
アンケート結果の分析・意見
地域政策が専門の大河原眞美さん(高崎経済大学名誉教授)
今回のアンケートは、回答者の7割強が町民で、子育て支援や教育環境や経済政策については常住の住民の立場から藤巻町政は一定の評価はされている。しかし、町の自然保護対策には不満が大きいことがわかる。別荘所有者だけでなく町民も緑豊かな多様な植物と野鳥が生息する軽井沢の継承を望んでいる。軽井沢町は、2020年からコロナ禍でワーケーションとして大きな脚光を浴び、不動産ブームである。人口増加により緑の空間が減るのは必然というより、50年後も100年後も緑豊かな軽井沢を維持できるように、町民をもっと巻き込んで町の未来像を取り組むことを求められている。
※ 1 軽井沢アンケート調査会...町民有志を中心に、軽井沢町商工会新軽井沢支部、旧軽井沢支部、軽井沢女性会、自然景観会議、別荘団体連合会、青年会議所の有志が協力。
※ 2 アンケート用紙の配布とメール送信などにより調査。回答数 315。
問、10年を振り返り、以下の項目を10点満点で採点したその平均(小数点第2位以下を四捨五入)。
子育て支援は充実したか 5.0
教育環境は十分に整えられているか 5.0
街並、景観はよくなったか 3.5
自然環境は守られたか 3.1
文化活動は十分に活用されているか 4.1
町の商工・経済は良くなったか 4.1
高齢者福祉と医療は充実したか 4.2
オーバーツーリズムや渋滞の対策は進んだか 2.9
別荘地としてのブランドは守られているか 4.1
公共事業は適正に行われたか 4.0
観光客の誘客や対策は適正に進められたか 4.1
防災に向けた取り組みが行われたか 4.3
子育て支援は充実したか 5.0
教育環境は十分に整えられているか 5.0
街並、景観はよくなったか 3.5
自然環境は守られたか 3.1
文化活動は十分に活用されているか 4.1
町の商工・経済は良くなったか 4.1
高齢者福祉と医療は充実したか 4.2
オーバーツーリズムや渋滞の対策は進んだか 2.9
別荘地としてのブランドは守られているか 4.1
公共事業は適正に行われたか 4.0
観光客の誘客や対策は適正に進められたか 4.1
防災に向けた取り組みが行われたか 4.3
問、第5次軽井沢町長期振興計画の住民アンケートで「継承すべき軽井沢らしさは」の1〜5位の項目を、継承されているかどうか10点満点で採点したその平均。(小数点第2位以下を四捨五入)。
1位 緑豊かな森のイメージ 3.8
2位 多様な植物や野鳥が生息できる生態系 3.8
3位 歴史的な建造物 4.3
4位 高級な格式のある別荘文化 3.8
5位 スポーツレクリエーションの町のイメージ 5.2
1位 緑豊かな森のイメージ 3.8
2位 多様な植物や野鳥が生息できる生態系 3.8
3位 歴史的な建造物 4.3
4位 高級な格式のある別荘文化 3.8
5位 スポーツレクリエーションの町のイメージ 5.2
軽井沢の文化遺産は守れるか⑥ 広川小夜子

(前号までの内容/ 民間で文化遺産を守ろうとしている人たちを取り上げています)
吉村順三設計による木造の音楽ホール。左手のスロープを上がると中2階がある。
吉村順三が設計したハーモニーハウス。





三井三郎助別荘の内観。
コスモスが美しく咲く、新幹線側道。
「ハロウィーンディナーブッフェ」。お化けの顔のようにデコレーションした「おばケーキ」などがずらり。
4品目「秋の月夜」は単品も可(1,200円)。ジュナールピールとホオズキ、ハシバミを合わせた温かい栗のスフレ。
メインデザートの一つ「信州りんごのメープル&バルサミコのエチュベ ミルフィーユ仕立て 渋皮栗のアイスを添えて」。
昨年の「ファームトゥテーブル」より。シェフ全員が一つずつ作ったミニャルディーズ。
モンブランなどが味わえる「秋の味覚アフタヌーンティーセット」(2,800円)は万平ホテルが提供。
辰雄を看病した追分の自宅。

今年の11月には睡鳩荘で『旧朝吹山荘移築10年展』(仮題)が行われる。
ハーモニーハウスを保存するためにYさんはEカフェを開業した。人気店となったEカフェを訪れる観光客で道路は渋滞し、近隣住民からの苦情が町役場へ殺到。2019年11月、軽井沢自然保護審議会で条例違反のカフェとして名前を公表するか否かの審議が行われた。
11月1日の自然保護審議会(注1)で配られた資料には、近隣住民からの苦情は付いていたが、カフェ側の意見は付いていなかった。審議委員からは「役場と事業者とのやりとりがわからないのでは中立的に判断できない」という声があがり、15日に行う自然保護対策会議(注2)に事業者を呼び意見を聞いたうえで判断することになった。
対策会議でカフェ側が意見を述べたが、12月上旬、「1月末までに協議書の提出が終了しなければ名前を公表する」と通達があった。Yさんは近隣を回って説明し役場へ提出するが「30軒回らないとダメだ」と言われ突き返されたという。住民の「説明会を開いてほしい」という意見を提出すると「これでは意見を聞いたことにならない」と役場は受け取らない。一部の近隣住民は説明会を求めていたが、これまで説明会を開いたのは3万坪のメガソーラーや3000坪の企業施設など大きな計画の場合で、小さなカフェは1件もなかった。提出しても突き返されるということを繰り返しているうちに期限は過ぎ、町のHPや広報に「条例(注3)違反のカフェ」として名前が公表。
対策会議の内容を調べるために議事録を取り寄せてみると、黒く塗りつぶされ一切内容がわからないようになっていた。私はこれを見て「なぜ隠さなければいけないことなのか」と不思議に思った。
公表によってこのことを知った人たちから「協議ということの解釈が間違っているのではないか」という声が聞かれるようになった。法令用語に詳しい高崎経済大学名誉教授の大河原眞美さんは「『協議』には『賛同』の意味はない。事業者は住民の苦情に対応しており(注4)、『協議が終わらなければ公表するべき』という結論には問題がある」と述べた。町議会議員のAさんは「軽井沢にとって大切な文化遺産を民間が守ろうとしているなら、町はそれに協力すべきだ」と話す。一方、「年間870万人もの観光客が訪れるオーバーツーリズムを何とかしなければ、またこうした問題は起きてくるだろう」と町の観光施策の問題点を指摘する声も聞かれた。
注1:町内の各団体から選出された委員で構成されている審議会
注2:軽井沢町役場の職員で行う会議
注3:軽井沢町の自然保護のための土地利用行為の手続等に係る条例
注4:駐車場を移動、コンサートを中止、速度制限20kの看板を出した。(前号に掲載)
※今までの経過はネットのバックナンバーで検索できます。
11月1日の自然保護審議会(注1)で配られた資料には、近隣住民からの苦情は付いていたが、カフェ側の意見は付いていなかった。審議委員からは「役場と事業者とのやりとりがわからないのでは中立的に判断できない」という声があがり、15日に行う自然保護対策会議(注2)に事業者を呼び意見を聞いたうえで判断することになった。
対策会議でカフェ側が意見を述べたが、12月上旬、「1月末までに協議書の提出が終了しなければ名前を公表する」と通達があった。Yさんは近隣を回って説明し役場へ提出するが「30軒回らないとダメだ」と言われ突き返されたという。住民の「説明会を開いてほしい」という意見を提出すると「これでは意見を聞いたことにならない」と役場は受け取らない。一部の近隣住民は説明会を求めていたが、これまで説明会を開いたのは3万坪のメガソーラーや3000坪の企業施設など大きな計画の場合で、小さなカフェは1件もなかった。提出しても突き返されるということを繰り返しているうちに期限は過ぎ、町のHPや広報に「条例(注3)違反のカフェ」として名前が公表。
対策会議の内容を調べるために議事録を取り寄せてみると、黒く塗りつぶされ一切内容がわからないようになっていた。私はこれを見て「なぜ隠さなければいけないことなのか」と不思議に思った。
公表によってこのことを知った人たちから「協議ということの解釈が間違っているのではないか」という声が聞かれるようになった。法令用語に詳しい高崎経済大学名誉教授の大河原眞美さんは「『協議』には『賛同』の意味はない。事業者は住民の苦情に対応しており(注4)、『協議が終わらなければ公表するべき』という結論には問題がある」と述べた。町議会議員のAさんは「軽井沢にとって大切な文化遺産を民間が守ろうとしているなら、町はそれに協力すべきだ」と話す。一方、「年間870万人もの観光客が訪れるオーバーツーリズムを何とかしなければ、またこうした問題は起きてくるだろう」と町の観光施策の問題点を指摘する声も聞かれた。
注1:町内の各団体から選出された委員で構成されている審議会
注2:軽井沢町役場の職員で行う会議
注3:軽井沢町の自然保護のための土地利用行為の手続等に係る条例
注4:駐車場を移動、コンサートを中止、速度制限20kの看板を出した。(前号に掲載)
※今までの経過はネットのバックナンバーで検索できます。
軽井沢の文化遺産は守れるか⑤ 広川小夜子

(前号までの内容/民間で文化遺産を守ろうとする人たちを取り上げています)
エロイーズ・カニングハムが青少年音楽協会を設立し、南ヶ丘に建てた吉村順三の設計によるハーモニーハウス。これを維持するためにYさんは2015年にエロイーズ・カフェとしてオープンした。しかし、2年後に思わぬことが起こった。
2017年、町の職員がカフェへやって来て「土地利用行為協議書が出されていない」と言うので、Yさんは驚いて町への手続きを行ったH事務所へ連絡した。2015年に保健所も佐久建設事務所も審査に来てOKになり、手続きはすべて終了したと理解して営業を始めていた。しかし、H事務所からの返事は「協議はしたと思いますが、最終的に書類が受理されていなかったかもしれません」という曖昧なものだった。
「土地利用行為の協議」とは開業するにあたり隣接する住民に開業の内容を説明することで、理解を得るよう協議と調整が求められている。2015年に店長が隣接の家を回って説明した書類の控えは残っていた。近隣の人たちがカフェのイベントに参加することもり、協議は終了していると思われた。「仕事が忙しくて忘れていた。大変申し訳ない」H事務所は平謝りに謝った。
2年間、何も言ってこなかった環境課が突然調べに来たのは、近隣住民からの苦情があったからだろう。マスコミに取り上げられ人気店となったカフェに観光客が押し寄せ、狭い道に車が渋滞するようになった。カフェは苦情を受けてコンサートなどのイベントを止め、制限速度「20K」という看板を数ヵ所に立てた。「駐車場を別の場所に」という住民の要望でプリンス通りの駐車場を借り、そこから歩いてもらうようにした。すると「庭をのぞかれる」「おしゃべりがうるさい」「ゴミを捨てて行く」という声があがり、「営業時間を短くしろ」など苦情や要求はさらにエスカレートしていった。カフェの店内も押しかける客の対応に追われ大変な状態だった。これは年間870万人が訪れるオーバーツーリズムの問題でもあった。オーバーツーリズムに関して町の対策は効果の薄い「パーク&ライド」しかなく、積極的な施策は見られなかった。
そして秋になり、11月の軽井沢自然保護審議会で条例違反のカフェの名前を公表するか否かの審議が行われた。(次号へ続く)
エロイーズ・カニングハムが青少年音楽協会を設立し、南ヶ丘に建てた吉村順三の設計によるハーモニーハウス。これを維持するためにYさんは2015年にエロイーズ・カフェとしてオープンした。しかし、2年後に思わぬことが起こった。
2017年、町の職員がカフェへやって来て「土地利用行為協議書が出されていない」と言うので、Yさんは驚いて町への手続きを行ったH事務所へ連絡した。2015年に保健所も佐久建設事務所も審査に来てOKになり、手続きはすべて終了したと理解して営業を始めていた。しかし、H事務所からの返事は「協議はしたと思いますが、最終的に書類が受理されていなかったかもしれません」という曖昧なものだった。
「土地利用行為の協議」とは開業するにあたり隣接する住民に開業の内容を説明することで、理解を得るよう協議と調整が求められている。2015年に店長が隣接の家を回って説明した書類の控えは残っていた。近隣の人たちがカフェのイベントに参加することもり、協議は終了していると思われた。「仕事が忙しくて忘れていた。大変申し訳ない」H事務所は平謝りに謝った。
2年間、何も言ってこなかった環境課が突然調べに来たのは、近隣住民からの苦情があったからだろう。マスコミに取り上げられ人気店となったカフェに観光客が押し寄せ、狭い道に車が渋滞するようになった。カフェは苦情を受けてコンサートなどのイベントを止め、制限速度「20K」という看板を数ヵ所に立てた。「駐車場を別の場所に」という住民の要望でプリンス通りの駐車場を借り、そこから歩いてもらうようにした。すると「庭をのぞかれる」「おしゃべりがうるさい」「ゴミを捨てて行く」という声があがり、「営業時間を短くしろ」など苦情や要求はさらにエスカレートしていった。カフェの店内も押しかける客の対応に追われ大変な状態だった。これは年間870万人が訪れるオーバーツーリズムの問題でもあった。オーバーツーリズムに関して町の対策は効果の薄い「パーク&ライド」しかなく、積極的な施策は見られなかった。
そして秋になり、11月の軽井沢自然保護審議会で条例違反のカフェの名前を公表するか否かの審議が行われた。(次号へ続く)
軽井沢の文化遺産は守れるか④ 広川小夜子

(前号までの内容/民間で文化遺産を守ろうとする人たちを取り上げています)
別荘の歴史に詳しいMさんは、旧松方家別荘が売り出されていることを知り、保存しなければという想いで一大決心して購入した。修復した建物は「カフェ涼の音」として活用され、人気を集めるようになった。それまで何も言わなかった近隣の住民が、ある日、裁判所へ訴え出た。
2016年8月に出された訴状には境界線との間にあるモミやカラマツの伐採と慰謝料の請求と書かれていた。その原因は、枝が伸びて境界を越えていること、1年で軽トラック1台分にも及ぶ落葉の処理に迷惑しているということであった。
モミは落葉樹ではないし、カラマツは小さな細い葉であり、庭にある数本のカラマツの落葉が1年で軽トラックいっぱいになるはずもない。Mさんはその疑問点と、軽井沢にとって美しく豊かな自然と景観が重要であることを訴えた。
裁判は2018年の春まで続いた。結局、軽井沢にとっての自然景観の重要性は考慮されず、法律のみで判断された「境界を越えた枝は切る」という判決であった。数カ月後にカフェを訪ねてみると、涼風が吹いていたテラスには暑い陽射しが当たっていた。枝をすべて伐採することによって傾き倒れやすくなったために、大木3本は根元から切らざるを得なかったという。
南ヶ丘にあるハーモニーハウスは昭和時代に宣教師の娘、エロイーズ・カニングハムが日本の子どもたちのために青少年音楽協会を設立し、音楽を学ぶ場として建てたものである。しかし、2000年にエロイーズが亡くなると維持するのが難しくなり、売却の話が持ち上がっていた。吉村順三の建築であり、エロイーズの想いのこもった建物を何とか保存できないかと地元の有志が集まって相談を重ねた。カフェとして使用することによって建物と音楽協会を維持しようというプランが決まり、2015年「エロイーズ・カフェ」が誕生した。軽井沢らしい物語のあるカフェとして注目され、順調にいくと思われたが、2017年、思わぬことが起こった。(次号に続く)
2016年8月に出された訴状には境界線との間にあるモミやカラマツの伐採と慰謝料の請求と書かれていた。その原因は、枝が伸びて境界を越えていること、1年で軽トラック1台分にも及ぶ落葉の処理に迷惑しているということであった。
モミは落葉樹ではないし、カラマツは小さな細い葉であり、庭にある数本のカラマツの落葉が1年で軽トラックいっぱいになるはずもない。Mさんはその疑問点と、軽井沢にとって美しく豊かな自然と景観が重要であることを訴えた。
裁判は2018年の春まで続いた。結局、軽井沢にとっての自然景観の重要性は考慮されず、法律のみで判断された「境界を越えた枝は切る」という判決であった。数カ月後にカフェを訪ねてみると、涼風が吹いていたテラスには暑い陽射しが当たっていた。枝をすべて伐採することによって傾き倒れやすくなったために、大木3本は根元から切らざるを得なかったという。
南ヶ丘にあるハーモニーハウスは昭和時代に宣教師の娘、エロイーズ・カニングハムが日本の子どもたちのために青少年音楽協会を設立し、音楽を学ぶ場として建てたものである。しかし、2000年にエロイーズが亡くなると維持するのが難しくなり、売却の話が持ち上がっていた。吉村順三の建築であり、エロイーズの想いのこもった建物を何とか保存できないかと地元の有志が集まって相談を重ねた。カフェとして使用することによって建物と音楽協会を維持しようというプランが決まり、2015年「エロイーズ・カフェ」が誕生した。軽井沢らしい物語のあるカフェとして注目され、順調にいくと思われたが、2017年、思わぬことが起こった。(次号に続く)
軽井沢の文化遺産は守れるか③

軽井沢の歴史的文化遺産を自分たちで守ろうとする人たちがいる。建物は使わなければ傷む、使ってこそ価値がある。彼らはそうした観点から活用しつつ維持してきた。
旧軽井沢の室生犀星旧居前にある「カフェ涼の音」は明治・大正期の別荘。ライシャワー夫人・松方ハルが所有し、その後、カナダの貿易商サロモンが所有した別荘で、作家の森瑤子が暮らしていたことでも知られている。
この別荘が売りに出されたとき、軽井沢の歴史に詳しいAさんは「売ったら建物は壊される」と一大決心をして購入した。数年前に小倉の里に別荘を持ったばかりなのでこの建物は知人に貸し、2012年からカフェとして活用している。
南ヶ丘のゴルフ場近くに、宣教師の娘エロイーズ・カニングハムが建てた吉村順三設計の「ハーモニーハウス」がある。
エロイーズは財産をつぎ込んで青少年音楽協会を立ち上げ、101歳で亡くなるまで、日本の子供たちの音楽教育のために活動した。エロイーズ亡き後、青少年音楽協会はこの建物を維持することが難しくなり、売却の話が持ち上がった。「売られたら壊され、細かく分譲されて自然も破戒される。この建物を守り、自然もそのまま残す方法はないか」と、事情を知る地元の人たちが集まって相談した。「カフェとして運営し、その売り上げを家賃として払うことで音楽協会は維持できる。それによって吉村順三の名建築も残すことができ、自然を守ることもできる」という計画が進み、2015年に「エロイーズカフェ」としてオープンした。
どちらも軽井沢らしい物語と雰囲気のあるカフェとして人気店となっていった。軽井沢の特集を組むテレビや雑誌はこぞって取材し取り上げた。その反響が大きく、店の前には行列ができた。
「カフェ涼の音」では、それまで何も言ってこなかった近隣住民が「葉が落ちて来て迷惑。木を切ってほしい」と言ってくるようになった。Aさんは何本か枝を切ったが苦情は収まらず、隣人はさらに「もっと木を切って」と要求し、ついに裁判へ発展した。(次号へ続く)
旧軽井沢の室生犀星旧居前にある「カフェ涼の音」は明治・大正期の別荘。ライシャワー夫人・松方ハルが所有し、その後、カナダの貿易商サロモンが所有した別荘で、作家の森瑤子が暮らしていたことでも知られている。
この別荘が売りに出されたとき、軽井沢の歴史に詳しいAさんは「売ったら建物は壊される」と一大決心をして購入した。数年前に小倉の里に別荘を持ったばかりなのでこの建物は知人に貸し、2012年からカフェとして活用している。
南ヶ丘のゴルフ場近くに、宣教師の娘エロイーズ・カニングハムが建てた吉村順三設計の「ハーモニーハウス」がある。
エロイーズは財産をつぎ込んで青少年音楽協会を立ち上げ、101歳で亡くなるまで、日本の子供たちの音楽教育のために活動した。エロイーズ亡き後、青少年音楽協会はこの建物を維持することが難しくなり、売却の話が持ち上がった。「売られたら壊され、細かく分譲されて自然も破戒される。この建物を守り、自然もそのまま残す方法はないか」と、事情を知る地元の人たちが集まって相談した。「カフェとして運営し、その売り上げを家賃として払うことで音楽協会は維持できる。それによって吉村順三の名建築も残すことができ、自然を守ることもできる」という計画が進み、2015年に「エロイーズカフェ」としてオープンした。
どちらも軽井沢らしい物語と雰囲気のあるカフェとして人気店となっていった。軽井沢の特集を組むテレビや雑誌はこぞって取材し取り上げた。その反響が大きく、店の前には行列ができた。
「カフェ涼の音」では、それまで何も言ってこなかった近隣住民が「葉が落ちて来て迷惑。木を切ってほしい」と言ってくるようになった。Aさんは何本か枝を切ったが苦情は収まらず、隣人はさらに「もっと木を切って」と要求し、ついに裁判へ発展した。(次号へ続く)
今、食べたい!軽井沢パンフェスタ〜第二弾〜
言わずと知れた老舗から、近年オープンの人気店まで、多くのパン屋が軒を連ねている軽井沢。そんな新旧パン屋のこの時期に食べたいパンを紹介。

シナモンアップルブレッド
ふんわりしっとりしたパン生地に、甘く煮たリンゴとレーズンがたっぷり練り込まれ、ほんのりシナモンが香る。食事にもおやつにもおすすめ。500円(税別)。 フランスベーカリー TEL0267-42-2155
ふんわりしっとりしたパン生地に、甘く煮たリンゴとレーズンがたっぷり練り込まれ、ほんのりシナモンが香る。食事にもおやつにもおすすめ。500円(税別)。 フランスベーカリー TEL0267-42-2155
イギリス食パン
1895年創業の老舗パン屋。明治時代に宣教師からパンの製法を習ってつくったイギリス食パンは、発酵を二度行うことでフカフカとした食感に。トーストするのもよし。1斤300円。 山屋 TEL0267-42-2019
1895年創業の老舗パン屋。明治時代に宣教師からパンの製法を習ってつくったイギリス食パンは、発酵を二度行うことでフカフカとした食感に。トーストするのもよし。1斤300円。 山屋 TEL0267-42-2019

ダマンド
アーモンドクリームをラム酒に浸したパンでサンドした菓子ブレッド。クロワッサンが一般的だが、よりラム酒が染み込むパンドミやバゲットを使用している。350円。 タルタニアン TEL0267-31-6146
アーモンドクリームをラム酒に浸したパンでサンドした菓子ブレッド。クロワッサンが一般的だが、よりラム酒が染み込むパンドミやバゲットを使用している。350円。 タルタニアン TEL0267-31-6146
緑友ビーガンカレー
菜種油入りのマフィン生地の上に、ミキサーした様々な野菜とオリジナルスパイスで煮込んだカレーがのっている。動物性のものは一切使っていない。280円(税別)。 緑友食堂&Space TEL0267-41-0682
菜種油入りのマフィン生地の上に、ミキサーした様々な野菜とオリジナルスパイスで煮込んだカレーがのっている。動物性のものは一切使っていない。280円(税別)。 緑友食堂&Space TEL0267-41-0682

牛乳パン
午前中には売り切れてしまうほど人気の牛乳パン。高さ、約10センチ。卵を使わないふわふわの生地に、お店独自ブレンドのクリームがたっぷり。260円。
ベーカリーカフェ ココラデ御代田店 TEL0267-41-0383
ライ麦100%
自家製とドイツ産のこだわりライ麦粉を使用したパン。独特の酸味と、もっちりとした食感が特徴。薄くスライスして、ハムやチーズを乗せて食べるのがおすすめ。800円(税込)。 一歩ベーカリー TEL0267-41-6511
自家製とドイツ産のこだわりライ麦粉を使用したパン。独特の酸味と、もっちりとした食感が特徴。薄くスライスして、ハムやチーズを乗せて食べるのがおすすめ。800円(税込)。 一歩ベーカリー TEL0267-41-6511
軽井沢の文化遺産は守れるか②

「軽井沢ブループラーク」が今年も発表された。筆者(広川)が紹介した別荘は2つあり、その一つは明治末期の「ウイン別荘」。アメリカ人宣教師ウイン・トーマス・クレイが建てた別荘で、大正期には歌人でアイルランド文学者の片山廣子が所有した。芥川龍之介、堀辰雄ら文学者ゆかりの別荘として知られているだけに文化遺産としての価値が高く、別荘建築史として見ても杉皮張りの外壁と内部の造りのコントラストが興味深い別荘である。100年以上経ている建物だけに、その行方が心配されている。所有者のUさんは毎年予算を決めて少しずつ補修しているが、その金額は決して安いものではない。自分の代は何とか持ち続けるが、次の代になったらどうなるか分からないと話す。
もう一つは「昭和の風流人」と謳われた菅原通済が建てた別荘。紅殻色の外壁に白縁の窓が美しく、内部には通済直筆の絵が描かれた襖があるのも貴重だ。現在の所有者Fさんは、この別荘を紹介した不動産屋に「古い建物なので壊して、新しい家を建てたらいいですよ」と言われたが、この建物をひと目で気に入り、傷んだところを自分で直して使っている。
軽井沢には別荘地としての歴史が120年以上あり、そこで暮らし交流した人々をたどってみると、いかに上質なリゾートの物語があったかが伺える。そこから欧米人の文化が伝わり、政財界や上流階級の避暑生活、作家たちの交流も生まれた。別荘文化があるからこそ、「軽井沢」の価値が現在まで続いているのだ。古くなったからと建て替えるのは簡単だが、別荘の価値を理解し大切に守りたいという人たちが、幸い軽井沢にはまだ多くいる。
自分の別荘から見える古い洋館が気になり、売却されると知って思い切って購入したYさん。調べてみたらヴォーリズ設計で東洋英和女学院校長ハミルトン女史の別荘だったことが分かり、女学院の関係者が驚いて飛んできた。Yさんは腕利きの大工に頼んで見事に修復し大切に守っている。
軽井沢の文化遺産の証(あかし)として、渡されるブル−プラークだが、銘板1枚だけでなく、修理費の一部を一緒に渡すことはできないだろうか。登録有形文化財のように、税金を軽減する方法も考えられるだろう。「別荘地軽井沢」のブランドでもある文化遺産を守っている民間人には、何らかの形で援助することが必要だ。(広川小夜子)
※次回は引き続き、民間で文化遺産を守っている例を取り上げます。
もう一つは「昭和の風流人」と謳われた菅原通済が建てた別荘。紅殻色の外壁に白縁の窓が美しく、内部には通済直筆の絵が描かれた襖があるのも貴重だ。現在の所有者Fさんは、この別荘を紹介した不動産屋に「古い建物なので壊して、新しい家を建てたらいいですよ」と言われたが、この建物をひと目で気に入り、傷んだところを自分で直して使っている。
軽井沢には別荘地としての歴史が120年以上あり、そこで暮らし交流した人々をたどってみると、いかに上質なリゾートの物語があったかが伺える。そこから欧米人の文化が伝わり、政財界や上流階級の避暑生活、作家たちの交流も生まれた。別荘文化があるからこそ、「軽井沢」の価値が現在まで続いているのだ。古くなったからと建て替えるのは簡単だが、別荘の価値を理解し大切に守りたいという人たちが、幸い軽井沢にはまだ多くいる。
自分の別荘から見える古い洋館が気になり、売却されると知って思い切って購入したYさん。調べてみたらヴォーリズ設計で東洋英和女学院校長ハミルトン女史の別荘だったことが分かり、女学院の関係者が驚いて飛んできた。Yさんは腕利きの大工に頼んで見事に修復し大切に守っている。
軽井沢の文化遺産の証(あかし)として、渡されるブル−プラークだが、銘板1枚だけでなく、修理費の一部を一緒に渡すことはできないだろうか。登録有形文化財のように、税金を軽減する方法も考えられるだろう。「別荘地軽井沢」のブランドでもある文化遺産を守っている民間人には、何らかの形で援助することが必要だ。(広川小夜子)
※次回は引き続き、民間で文化遺産を守っている例を取り上げます。
今、食べたい!軽井沢パンフェスタ〜第一弾〜
言わずと知れた老舗から、近年オープンの人気店まで、多くのパン屋が軒を連ねている軽井沢。そんな新旧パン屋のこの時期に食べたいパンを紹介。

しなの
信州産小麦を使ったシンプルなバゲット。創業当初からの人気メニュー。粉に甘みがあるので、何も付けずに食べてもOK。春の行楽の際はサンドイッチにお勧め。350円(税込)。
haluta karuizawa TEL0267-31-0841
信州産小麦を使ったシンプルなバゲット。創業当初からの人気メニュー。粉に甘みがあるので、何も付けずに食べてもOK。春の行楽の際はサンドイッチにお勧め。350円(税込)。
haluta karuizawa TEL0267-31-0841

いちごのデニッシュ
カスタードと生クリームを合わせたクリームの上に、旬のいちごをトッピング。発酵バターを使ったサクサクのデニッシュとジューシーないちごがベストマッチ。420円(税別)。(3月中の土日に販売。平日は要問い合わせ)
TEL0267-42-2149(浅野屋 軽井沢旧道本店)
カスタードと生クリームを合わせたクリームの上に、旬のいちごをトッピング。発酵バターを使ったサクサクのデニッシュとジューシーないちごがベストマッチ。420円(税別)。(3月中の土日に販売。平日は要問い合わせ)
TEL0267-42-2149(浅野屋 軽井沢旧道本店)
ダノワーズ・オ・ポワ--ル
パリパリサクサクのデニッシュの上に、薄く焼き色の付いた洋梨のコンポートを敷き詰めたパン。爽やかな甘みとフレッシュな洋梨の香りが口の中に広がる。350円(税別)。
ベーカリー&レストラン 沢村 TEL0267-41-3777
パリパリサクサクのデニッシュの上に、薄く焼き色の付いた洋梨のコンポートを敷き詰めたパン。爽やかな甘みとフレッシュな洋梨の香りが口の中に広がる。350円(税別)。
ベーカリー&レストラン 沢村 TEL0267-41-3777
アプリコット フロマージュ
ペースト状にした、甘く香ばしいアーモンドクッキーが表面を覆う。外はさくっと、中はふんわりの食感。クリームチーズと杏が、舌の上でよいハーモニーを奏でる。170円(税別)。
ブーランジェリー レイヨンヴェール TEL0267-45-2683
ペースト状にした、甘く香ばしいアーモンドクッキーが表面を覆う。外はさくっと、中はふんわりの食感。クリームチーズと杏が、舌の上でよいハーモニーを奏でる。170円(税別)。
ブーランジェリー レイヨンヴェール TEL0267-45-2683
アップルパイ
ソテーしたリンゴとアーモンドクリームがサクサクのパイ生地で包まれている。しっとりとしたリンゴは甘く、やわらかく、ボリュームたっぷり。4月下旬まで販売。630円(税込み)。
pain trouver TEL0267-41-6678
ソテーしたリンゴとアーモンドクリームがサクサクのパイ生地で包まれている。しっとりとしたリンゴは甘く、やわらかく、ボリュームたっぷり。4月下旬まで販売。630円(税込み)。
pain trouver TEL0267-41-6678
軽井沢の文化遺産は守れるか①
「大きな損失」のニュースが全国へ
パリのノートルダム大聖堂や沖縄の首里城の焼失で、文化財を失うことのむなしさを多くの人が感じた2019年。軽井沢もまた、100年の別荘の物語を綴ってきた三井三郎助別荘を失った。10月5日、重機で壁を破壊する様子が朝日、読売、毎日、信濃毎日、軽井沢新聞で報じられ、ヤフーニュースやマイクロソフトニュース、ツイッター等SNSでも広がった。マイクロソフトニュースでは見出しに「大きな損失」の文字が記され、「文化遺産を大切にしない軽井沢町」が全国的に印象づけられた。
眠っている文化財の活用は
町が所有しながら、眠っているままの文化財は3軒ある。取得してから旧スイス公使館別荘は12年、八田別荘は4年、枡形茶屋は3年という歳月を経た。12月の町議会では「どのように活用するのか」と議員が質問し、検討の期限を迫った。町長は「施設の環境や状態を勘案する必要がある。八田別荘は軽井沢最古の別荘として存在することに価値がある。生きた教材として有効活用したい」と答えたものの、どのように活用するかという具体的な説明はなかった。「いつまで検討しているのか」という議員の質問に「八田別荘は来年には計画を決めて具体化したい」と方向を示した。しかし、旧スイス公使館別荘については、「耐震構造にする必要があり、億単位のお金がかかる」。枡形茶屋については「地域住民と話し合い活用を考える」と答弁し、はっきりとした期限は示されなかった。
旧スイス公使館別荘の保存運動を見てきた町民は「建物が存在するだけで 価値があるというのは大間違い。文化財があることを知って、訪れて、見て理解してこそ、この町の本来の価値を知ることができる」。また、別荘の住民は「軽井沢ブランドが弱くなっている今、1日も早く活用する必要がある」と話した。
パリのノートルダム大聖堂や沖縄の首里城の焼失で、文化財を失うことのむなしさを多くの人が感じた2019年。軽井沢もまた、100年の別荘の物語を綴ってきた三井三郎助別荘を失った。10月5日、重機で壁を破壊する様子が朝日、読売、毎日、信濃毎日、軽井沢新聞で報じられ、ヤフーニュースやマイクロソフトニュース、ツイッター等SNSでも広がった。マイクロソフトニュースでは見出しに「大きな損失」の文字が記され、「文化遺産を大切にしない軽井沢町」が全国的に印象づけられた。
眠っている文化財の活用は
町が所有しながら、眠っているままの文化財は3軒ある。取得してから旧スイス公使館別荘は12年、八田別荘は4年、枡形茶屋は3年という歳月を経た。12月の町議会では「どのように活用するのか」と議員が質問し、検討の期限を迫った。町長は「施設の環境や状態を勘案する必要がある。八田別荘は軽井沢最古の別荘として存在することに価値がある。生きた教材として有効活用したい」と答えたものの、どのように活用するかという具体的な説明はなかった。「いつまで検討しているのか」という議員の質問に「八田別荘は来年には計画を決めて具体化したい」と方向を示した。しかし、旧スイス公使館別荘については、「耐震構造にする必要があり、億単位のお金がかかる」。枡形茶屋については「地域住民と話し合い活用を考える」と答弁し、はっきりとした期限は示されなかった。
旧スイス公使館別荘の保存運動を見てきた町民は「建物が存在するだけで 価値があるというのは大間違い。文化財があることを知って、訪れて、見て理解してこそ、この町の本来の価値を知ることができる」。また、別荘の住民は「軽井沢ブランドが弱くなっている今、1日も早く活用する必要がある」と話した。
三井三郎助別荘、売却の波紋

(文:広川小夜子 軽井沢新聞前編集長)
「解体か、保存か」、このショッキングな見出しで新聞記事となり、ヤフーニュースにも取り上げられたことで、軽井沢の三井三郎助別荘がヴァージン諸島のアジア人の会社に売却され、取り壊しの危機にあることが全国的に知れ渡った。
ただ古い別荘というだけでなく、タゴールや西園寺公望、広岡浅子など訪れた人々の物語があり、エピソードは上皇陛下にまで及ぶ。120年以上経った今も室内は優雅な雰囲気そのままに、当時の籐椅子が置かれている。ただ壊されてしまうにはあまりにもったいない。「三笠ホテルと同等の価値がある」と文化財審議会の大久保会長は話している。]
私が知る限り、三井三郎助別荘の保存は今までに3回のチャンスがあった。そのうちの2回は町行政の判断で消えている。最初は1999年、三井家から町に寄付するという話があり、当時の町長は承諾した。しかしその後、徳川別荘を寄付するという話が持ち上がり、町は三井別荘の寄贈を断った。(数か月後、徳川別荘の話は所有者側から断られた)。
このあと、三井別荘は資産家のI氏が購入した。彼はこの別荘の文化的な価値を理解し、有効な利用方法を模索して見学会なども許可した。10年間所有したが、老齢のため売却を考えるようになった。売ってほしいと訪れる不動産屋を断り、建物を保存することを条件に買ってくれる人を探した。2017年、建物を保存し、サマースクールを行いたいという人物が現れたので売却を決めた。町役場に行くと「学校法人の資格はあるのか」と問われ、ないと答えると拒まれた。欧米では英語や音楽の夏期講習は頻繁に行われ、軽井沢でもモルナール氏によるミュージックサマースクールが開かれてきたにもかかわらずだ。その人は土地の購入をあきらめた。会社の山荘にするとでも言えば許可されたのだろう。そして、3人目が現れたのが今年の4月。その実業家は真剣に考えてくれたが、土地の謄本をとってみると「時すでに遅し」、1月に売られたあとだった。
軽井沢町長は「スイス公使館別荘、八田別荘、枡形の茶屋を活用していないのに、さらに三井別荘保存に税金の投入はできない」と言う。軽井沢の文化遺産として必要なものだから、歴史的建造物を購入したのではなかったか。保存しても使わなければ宝の持ち腐れである。活用する気があるならもっと前から利用できたはずだ。三井別荘の保存には活用法も提案されている。
中学校や発地市庭建設にかかった巨額な数字をみれば、僅か3億円で軽井沢のブランドを守ることができるなら安いものだ。保存の機会を2回逃した町役場にとって、今が最後のチャンスなのである。
「解体か、保存か」、このショッキングな見出しで新聞記事となり、ヤフーニュースにも取り上げられたことで、軽井沢の三井三郎助別荘がヴァージン諸島のアジア人の会社に売却され、取り壊しの危機にあることが全国的に知れ渡った。
ただ古い別荘というだけでなく、タゴールや西園寺公望、広岡浅子など訪れた人々の物語があり、エピソードは上皇陛下にまで及ぶ。120年以上経った今も室内は優雅な雰囲気そのままに、当時の籐椅子が置かれている。ただ壊されてしまうにはあまりにもったいない。「三笠ホテルと同等の価値がある」と文化財審議会の大久保会長は話している。]
私が知る限り、三井三郎助別荘の保存は今までに3回のチャンスがあった。そのうちの2回は町行政の判断で消えている。最初は1999年、三井家から町に寄付するという話があり、当時の町長は承諾した。しかしその後、徳川別荘を寄付するという話が持ち上がり、町は三井別荘の寄贈を断った。(数か月後、徳川別荘の話は所有者側から断られた)。
このあと、三井別荘は資産家のI氏が購入した。彼はこの別荘の文化的な価値を理解し、有効な利用方法を模索して見学会なども許可した。10年間所有したが、老齢のため売却を考えるようになった。売ってほしいと訪れる不動産屋を断り、建物を保存することを条件に買ってくれる人を探した。2017年、建物を保存し、サマースクールを行いたいという人物が現れたので売却を決めた。町役場に行くと「学校法人の資格はあるのか」と問われ、ないと答えると拒まれた。欧米では英語や音楽の夏期講習は頻繁に行われ、軽井沢でもモルナール氏によるミュージックサマースクールが開かれてきたにもかかわらずだ。その人は土地の購入をあきらめた。会社の山荘にするとでも言えば許可されたのだろう。そして、3人目が現れたのが今年の4月。その実業家は真剣に考えてくれたが、土地の謄本をとってみると「時すでに遅し」、1月に売られたあとだった。
軽井沢町長は「スイス公使館別荘、八田別荘、枡形の茶屋を活用していないのに、さらに三井別荘保存に税金の投入はできない」と言う。軽井沢の文化遺産として必要なものだから、歴史的建造物を購入したのではなかったか。保存しても使わなければ宝の持ち腐れである。活用する気があるならもっと前から利用できたはずだ。三井別荘の保存には活用法も提案されている。
中学校や発地市庭建設にかかった巨額な数字をみれば、僅か3億円で軽井沢のブランドを守ることができるなら安いものだ。保存の機会を2回逃した町役場にとって、今が最後のチャンスなのである。
思い出多い軽井沢の地で バラエティに富んだ名曲を披露
歌手・森山良子さんインタビュー
--今回のコンサートツアーの構成はどのような予定ですか。
新旧織り交ぜて曲目を用意しています。「涙そうそう」や「さとうきび畑」、「この広い野原いっぱい」など懐かしい歌もありますし、新しい歌、最近アルバムを出したクラシックの名曲、ミュージカルも大好きな曲があるので何曲か入れて、バラエティに富んだコンサートを予定しています。
--これまでも軽井沢大賀ホールでコンサートを開いていますが、印象はいかがでしたか。
昔から軽井沢には遊びにきていたので、大賀ホールができてから、軽井沢で歌うのも素敵だなと思っていたものですから、大賀ホールに行きたいなという気持ちがありました。ほかにはない造りで、心地よい広さですし、お客様と近い感じもありますね。
--軽井沢のお客様はいかがですか?
軽井沢を愛している方々が連れ立ってきてくださったり、地元に長く暮らしている方がいらしてくださったり、とても和やかな気分になれますね。リタイアして住んでいるお友達もたくさんいますので、顔を見るのも楽しみです。軽井沢は若い頃からよく訪れていた場所で、地元の方々にもとてもよく接していただいたので、またひと時をご一緒できるのが嬉しいですね。
新旧織り交ぜて曲目を用意しています。「涙そうそう」や「さとうきび畑」、「この広い野原いっぱい」など懐かしい歌もありますし、新しい歌、最近アルバムを出したクラシックの名曲、ミュージカルも大好きな曲があるので何曲か入れて、バラエティに富んだコンサートを予定しています。
--これまでも軽井沢大賀ホールでコンサートを開いていますが、印象はいかがでしたか。
昔から軽井沢には遊びにきていたので、大賀ホールができてから、軽井沢で歌うのも素敵だなと思っていたものですから、大賀ホールに行きたいなという気持ちがありました。ほかにはない造りで、心地よい広さですし、お客様と近い感じもありますね。
--軽井沢のお客様はいかがですか?
軽井沢を愛している方々が連れ立ってきてくださったり、地元に長く暮らしている方がいらしてくださったり、とても和やかな気分になれますね。リタイアして住んでいるお友達もたくさんいますので、顔を見るのも楽しみです。軽井沢は若い頃からよく訪れていた場所で、地元の方々にもとてもよく接していただいたので、またひと時をご一緒できるのが嬉しいですね。
森山良子コンサートツアー2019〜2020 Prime Songs
6/2(日)16:00開演、軽井沢大賀ホール
全席指定 SS席8,000円(1ドリンク付)
S席6,500円 A席5,500円
TEL0267-31-5555(軽井沢大賀ホールチケットサービス)
6/2(日)16:00開演、軽井沢大賀ホール
全席指定 SS席8,000円(1ドリンク付)
S席6,500円 A席5,500円
TEL0267-31-5555(軽井沢大賀ホールチケットサービス)
コスモス5本採って、窃盗犯?

詩や小説に出てくる「野の花を摘んで」という言葉。軽井沢もそんなイメージがぴったりだが、この夏、こんなことが起こっていた。
8月上旬、中軽井沢の新幹線の側道でコスモス5本を摘んだ女性が軽井沢署に連行され取り調べを受けた。「コスモス5本で?」と思った私はその女性Sさんを取材し事件の内容を詳しく聞いてみた。
歩道との間に柵はなく、道端に咲いているものと思ったSさんはコスモスを10㎝長さに5本採った。すると、すぐ近くで一時停止違反を見張っていた警官が飛んできて「盗りましたね。人の物をとればそれは窃盗。現行犯です」と言った。Sさんは「盗むつもりはありません。謝ってきます」と言ったが、「その必要はない」と軽井沢警察署へ連れて行かれた。K刑事が写真と指紋をとると言うので、「弁護士を呼びたい」とSさんは言ったが「そんなことをしたら、相手に訴えられて大変な事になる。写真と指紋をとらないと帰れない」と数回言われ仕方なく応じたという。「謝りに行きます」と言うとK刑事は「そんなことをする必要はない。問題が大きくなる」と言い、Sさんは謝ることも弁護士を呼ぶことも拒否され、取り調べは2時間近くかかった。
話を聞く中で、いくつかの疑問を感じた。刑事訴訟法で義務づけられている黙秘権があることをK刑事は伝えていない。謝りに行くことも、弁護士を呼ぶことも拒否したのはなぜか。
次にコスモスの所有者Yさんに話を聞いた。コスモスから離れた畑にいたYさんはSさんに気がついて、「花が不揃いだから、その先の方の花を摘んで」と言ったという。離れていたのでSさんにその言葉はよく聞こえなかったようだ。Yさんは警官に「大ごとにしないで」と伝えたが、「あの人は反省がないから」とSさんを警察署に連れて行ったとYさんは言う。「家に飾るからもらっていい?と断る人にはどうぞと言っています。私は警察に通報していません」Yさんは特に問題にしていなかったことがわかった。
次に軽井沢警察署に取材に行き、佐藤次長に会った。「最初に発見したのは夏の応援に来ていた伊那署の警察官。職務執行についての違法はありません。警察からの事件の広報ではないし、個人のプライバシーに関わるので、コメントは差し控えたい。刑事の対応や被害届についても言えない」というのが回答だった。
コスモスを5本摘んだことから起こったこの事件--あなたはどう思いますか?(広川小夜子)
8月上旬、中軽井沢の新幹線の側道でコスモス5本を摘んだ女性が軽井沢署に連行され取り調べを受けた。「コスモス5本で?」と思った私はその女性Sさんを取材し事件の内容を詳しく聞いてみた。
歩道との間に柵はなく、道端に咲いているものと思ったSさんはコスモスを10㎝長さに5本採った。すると、すぐ近くで一時停止違反を見張っていた警官が飛んできて「盗りましたね。人の物をとればそれは窃盗。現行犯です」と言った。Sさんは「盗むつもりはありません。謝ってきます」と言ったが、「その必要はない」と軽井沢警察署へ連れて行かれた。K刑事が写真と指紋をとると言うので、「弁護士を呼びたい」とSさんは言ったが「そんなことをしたら、相手に訴えられて大変な事になる。写真と指紋をとらないと帰れない」と数回言われ仕方なく応じたという。「謝りに行きます」と言うとK刑事は「そんなことをする必要はない。問題が大きくなる」と言い、Sさんは謝ることも弁護士を呼ぶことも拒否され、取り調べは2時間近くかかった。
話を聞く中で、いくつかの疑問を感じた。刑事訴訟法で義務づけられている黙秘権があることをK刑事は伝えていない。謝りに行くことも、弁護士を呼ぶことも拒否したのはなぜか。
次にコスモスの所有者Yさんに話を聞いた。コスモスから離れた畑にいたYさんはSさんに気がついて、「花が不揃いだから、その先の方の花を摘んで」と言ったという。離れていたのでSさんにその言葉はよく聞こえなかったようだ。Yさんは警官に「大ごとにしないで」と伝えたが、「あの人は反省がないから」とSさんを警察署に連れて行ったとYさんは言う。「家に飾るからもらっていい?と断る人にはどうぞと言っています。私は警察に通報していません」Yさんは特に問題にしていなかったことがわかった。
次に軽井沢警察署に取材に行き、佐藤次長に会った。「最初に発見したのは夏の応援に来ていた伊那署の警察官。職務執行についての違法はありません。警察からの事件の広報ではないし、個人のプライバシーに関わるので、コメントは差し控えたい。刑事の対応や被害届についても言えない」というのが回答だった。
コスモスを5本摘んだことから起こったこの事件--あなたはどう思いますか?(広川小夜子)
軽井沢で楽しむ食の秋





キノコにリンゴ、栗や新そばなど、食欲を刺激する秋の味覚。この時期の軽井沢には季節の食材を満喫できる美味しいイベントが目白押しです。
見て、食べて、二度楽しむハロウィンメニュー
軽井沢プリンスホテルはハロウィンをテーマにした料理やデザートを10月31日まで提供している。くもの巣をイメージした「スパイダーチョコレートケーキ」やジャック・オ・ランタンをモチーフにした「ぱくぱくパンプキン」などフォトジェニックなメニューが同ホテルウエスト、イーストの一部レストランで味わえる。ウエストの「ブッフェレストラン ニューヨーク」ではハロウィン仕様のランチ・ディナーのブッフェを実施。ランチブッフェ大人2,800円。ディナーブッフェ大人5,200円。☎0267-42-1111
フルーツの味わいをスパイスで際立たせる
季節のフルーツとスパイスを組み合わせたデザートコース「デセール・デピス」が金・土・日曜日限定でホテルブレストンコートに登場する。コースは全5品で、柿にカルダモンを合わせたスペイン風クレームブリュレや、リンゴにシナモンやクローブを合わせたババロア、ブドウにレモンペッパーを加えたクレメダンジュなど、すべてのデザートに秋の果物とスパイスを使っている。10月12日〜28日の金・土・日。3,500円。☎0267-46-6200
ブッフェ+メインで秋の味覚を提供
スイーツブッフェとデザートプレートの2つのスタイルで、季節のスイーツを味わえるマリオットホテルの「Sweets Sensation Autumn」。ブッフェにはイチジク、ブドウ、リンゴなど信州の果物を使ったタルトやジュレなど11種のデザートが並ぶ。メインデザートはメープルとバルサミコで蒸した信州リンゴをミルフィーユ仕立てにしたプレートやワッフル、パンケーキなど3種類から選べる。ドリンク付き2,500円。前日までに要予約。11月30日まで。☎0267-46-6611
信州の秋を凝縮 この日限りの10人10皿
「信州礼賛〜食材と対話する料理人たち〜」をテーマに、軽井沢を中心とした10人の信州のシェフが一皿ずつ料理を仕上げる「ファームトゥテーブル2018」。信州の生産者が思う「今、使ってほしい食材」をもとに、各シェフが発想を広げ調理。プロジェクトディレクターの渡辺万里さんは「信州の美食が結集した10皿になる。豊かな食材がそろう信州の奥深さを感じてほしい」。11月18日12:00開場。会場はヴィラ・デ・マリアージュ軽井澤。会費15,000円(ドリンクペアリング代別途)。申し込み・問合せはinfo-spain@mbh.nifty.comまで。
「秋の収穫祭」テーマに軽井沢スイーツ散歩
6回目の「軽井沢スイーツ散歩」(10/20〜11/30)は「秋の収穫祭」がテーマ。旧軽井沢ホテル音羽ノ森、万平ホテル、軽井沢ホテルロンギングハウスなど、11店舗がオリジナルスイーツを提供する。来年2月の「軽井沢スイーツ散歩 ザ・プレミアム」の入場券が当たるスタンプラリーもある。☎0267-46-9155(事務局)
見て、食べて、二度楽しむハロウィンメニュー
軽井沢プリンスホテルはハロウィンをテーマにした料理やデザートを10月31日まで提供している。くもの巣をイメージした「スパイダーチョコレートケーキ」やジャック・オ・ランタンをモチーフにした「ぱくぱくパンプキン」などフォトジェニックなメニューが同ホテルウエスト、イーストの一部レストランで味わえる。ウエストの「ブッフェレストラン ニューヨーク」ではハロウィン仕様のランチ・ディナーのブッフェを実施。ランチブッフェ大人2,800円。ディナーブッフェ大人5,200円。☎0267-42-1111
フルーツの味わいをスパイスで際立たせる
季節のフルーツとスパイスを組み合わせたデザートコース「デセール・デピス」が金・土・日曜日限定でホテルブレストンコートに登場する。コースは全5品で、柿にカルダモンを合わせたスペイン風クレームブリュレや、リンゴにシナモンやクローブを合わせたババロア、ブドウにレモンペッパーを加えたクレメダンジュなど、すべてのデザートに秋の果物とスパイスを使っている。10月12日〜28日の金・土・日。3,500円。☎0267-46-6200
ブッフェ+メインで秋の味覚を提供
スイーツブッフェとデザートプレートの2つのスタイルで、季節のスイーツを味わえるマリオットホテルの「Sweets Sensation Autumn」。ブッフェにはイチジク、ブドウ、リンゴなど信州の果物を使ったタルトやジュレなど11種のデザートが並ぶ。メインデザートはメープルとバルサミコで蒸した信州リンゴをミルフィーユ仕立てにしたプレートやワッフル、パンケーキなど3種類から選べる。ドリンク付き2,500円。前日までに要予約。11月30日まで。☎0267-46-6611
信州の秋を凝縮 この日限りの10人10皿
「信州礼賛〜食材と対話する料理人たち〜」をテーマに、軽井沢を中心とした10人の信州のシェフが一皿ずつ料理を仕上げる「ファームトゥテーブル2018」。信州の生産者が思う「今、使ってほしい食材」をもとに、各シェフが発想を広げ調理。プロジェクトディレクターの渡辺万里さんは「信州の美食が結集した10皿になる。豊かな食材がそろう信州の奥深さを感じてほしい」。11月18日12:00開場。会場はヴィラ・デ・マリアージュ軽井澤。会費15,000円(ドリンクペアリング代別途)。申し込み・問合せはinfo-spain@mbh.nifty.comまで。
「秋の収穫祭」テーマに軽井沢スイーツ散歩
6回目の「軽井沢スイーツ散歩」(10/20〜11/30)は「秋の収穫祭」がテーマ。旧軽井沢ホテル音羽ノ森、万平ホテル、軽井沢ホテルロンギングハウスなど、11店舗がオリジナルスイーツを提供する。来年2月の「軽井沢スイーツ散歩 ザ・プレミアム」の入場券が当たるスタンプラリーもある。☎0267-46-9155(事務局)
堀辰雄夫人・随筆家 堀多恵子 さん

ほりたえこ (1913−2010)
静岡県生まれ。生後3ヵ月〜10歳まで香港、広東で過ごす。東京女子大を卒業後、信濃追分で堀辰雄と出会い、1938年に結婚。昭和19年に信濃追分へ疎開し、病に伏せた堀辰雄の看病を続ける。堀辰雄死去後、エッセイストとして活躍。1985年〜2010年軽井沢高原文庫の顧問・のち理事を務める。主な著書に「来し方の記」「山麓の四季」等、著書多数。
静岡県生まれ。生後3ヵ月〜10歳まで香港、広東で過ごす。東京女子大を卒業後、信濃追分で堀辰雄と出会い、1938年に結婚。昭和19年に信濃追分へ疎開し、病に伏せた堀辰雄の看病を続ける。堀辰雄死去後、エッセイストとして活躍。1985年〜2010年軽井沢高原文庫の顧問・のち理事を務める。主な著書に「来し方の記」「山麓の四季」等、著書多数。

昭和56年、『軽井沢ヴィネット』の特集の取材で堀辰雄夫人の堀多恵子さんにお会いした。
多恵子さんが堀辰雄と出会ったのは昭和12年。ヴィネット54号でその時の印象について語っている。「9歳も離れていましたから、結婚の対象としては考えていなかったんですよ。『風立ちぬ』の作者として名前は知っていました。色々な話を聞けるのが楽しかったですね」
昭和19年、疎開のため追分へ引っ越す。想像以上に厳しい軽井沢の冬。物のない戦時中の暮らし、繰り返す喀血、寝たきりになった辰雄の看病...と、多恵子さんにはつらい日々だったに違いない。しかし、笑顔で看病を続ける多恵子さんの明るさに辰雄はどれくらい救われたことだろう。辰雄が亡くなった後も1年の大半を追分で過ごしていた。門の扉はいつも開いて、訪ねて来るファンに気さくに応じる。中には知らずに入って来てお弁当を広げたりする観光客もいるというので、「門を閉めたらどうですか」と言う私に「いいえ、せっかくいらして下さるんですから、どなたともお会いします」と、にこやかに応える多恵子さん。
晩年は通年を追分で過ごした。辰雄と過ごした家や書庫を軽井沢町へ寄贈したが、寄贈したことを自分から話すことはなかった。町の行事などに何かと引っ張り出されていたが、嫌な顔をせず快く応じる多恵子さんは追分のマドンナ的存在でもあった。
そんな多恵子さんを思い出すたびに気になるのは、あの堀辰雄文学記念館の前に取り付られた「本陣の門」である。堀辰雄と何の関係もない門を「追分の目立つ場所だから」と置くのは、軽井沢文学を代表する作家・堀辰雄に対して、また追分を心から愛した多恵子さんに対しても失礼であろう。私にそっともらした「あの門は堀とは関係ないので困ります」と嘆いていた多恵子さんの気持ちを思うと、今からでもなんとか移動してほしいと願わずにいられない。(広川小夜子)(門の詳細は軽井沢新聞2016年9月号に掲載)
多恵子さんが堀辰雄と出会ったのは昭和12年。ヴィネット54号でその時の印象について語っている。「9歳も離れていましたから、結婚の対象としては考えていなかったんですよ。『風立ちぬ』の作者として名前は知っていました。色々な話を聞けるのが楽しかったですね」
昭和19年、疎開のため追分へ引っ越す。想像以上に厳しい軽井沢の冬。物のない戦時中の暮らし、繰り返す喀血、寝たきりになった辰雄の看病...と、多恵子さんにはつらい日々だったに違いない。しかし、笑顔で看病を続ける多恵子さんの明るさに辰雄はどれくらい救われたことだろう。辰雄が亡くなった後も1年の大半を追分で過ごしていた。門の扉はいつも開いて、訪ねて来るファンに気さくに応じる。中には知らずに入って来てお弁当を広げたりする観光客もいるというので、「門を閉めたらどうですか」と言う私に「いいえ、せっかくいらして下さるんですから、どなたともお会いします」と、にこやかに応える多恵子さん。
晩年は通年を追分で過ごした。辰雄と過ごした家や書庫を軽井沢町へ寄贈したが、寄贈したことを自分から話すことはなかった。町の行事などに何かと引っ張り出されていたが、嫌な顔をせず快く応じる多恵子さんは追分のマドンナ的存在でもあった。
そんな多恵子さんを思い出すたびに気になるのは、あの堀辰雄文学記念館の前に取り付られた「本陣の門」である。堀辰雄と何の関係もない門を「追分の目立つ場所だから」と置くのは、軽井沢文学を代表する作家・堀辰雄に対して、また追分を心から愛した多恵子さんに対しても失礼であろう。私にそっともらした「あの門は堀とは関係ないので困ります」と嘆いていた多恵子さんの気持ちを思うと、今からでもなんとか移動してほしいと願わずにいられない。(広川小夜子)(門の詳細は軽井沢新聞2016年9月号に掲載)
30年経ても洒落た庭園カフェ ミス・アナベラ


個性的な外観だが、中はシックな雰囲気。入口右側には初代の愛犬をモチーフにした、坂井達省作の彫刻が置かれている。
TEL0267-45-0056 軽井沢町長倉820
TEL0267-45-0056 軽井沢町長倉820
寺岡誠さん・恵子さん夫妻は森の中で暮らしたいと思い、1985年に横浜から軽井沢へ移り住んだ。「緑に包まれた別世界」というイメージにぴったりの場所が見つかり、カフェを開いたのが1988年。
天井の高い個性的なデザインの洋館、大きなモミの木陰にテーブルやイスを置き、「庭園カフェ」のイメージを大切にした喫茶店が誕生した。この頃はワンちゃんOKの店は珍しく、愛犬家にも喜ばれた。店名は友人のアイルランド系米国人の祖母「アナベラさん」から名づけたそうだ。
今年で30周年を迎える。長年愛されてきたメニューは恵子夫人手作りのアイリッシュシチューや信州りんごを使ったアップルパイ。オープン当時はアイルランドの陶器も販売していたが、その後スウェーデンのバッグやランチョンマットなども扱うようになり、今では、北欧中心の品質の良い物が買える店としても知られている。
30年の間には、モミの大木に雷が落ちたり、隣家の火事で延焼するところだったりと、様々な出来事があった。「軽井沢ならではの素晴らしい人たちに出会えたことは幸せだった。時代に迎合することなく、上質を感じる大人の店にしていきたい」と寺岡さんは30年を振り返り、希望を語った。
天井の高い個性的なデザインの洋館、大きなモミの木陰にテーブルやイスを置き、「庭園カフェ」のイメージを大切にした喫茶店が誕生した。この頃はワンちゃんOKの店は珍しく、愛犬家にも喜ばれた。店名は友人のアイルランド系米国人の祖母「アナベラさん」から名づけたそうだ。
今年で30周年を迎える。長年愛されてきたメニューは恵子夫人手作りのアイリッシュシチューや信州りんごを使ったアップルパイ。オープン当時はアイルランドの陶器も販売していたが、その後スウェーデンのバッグやランチョンマットなども扱うようになり、今では、北欧中心の品質の良い物が買える店としても知られている。
30年の間には、モミの大木に雷が落ちたり、隣家の火事で延焼するところだったりと、様々な出来事があった。「軽井沢ならではの素晴らしい人たちに出会えたことは幸せだった。時代に迎合することなく、上質を感じる大人の店にしていきたい」と寺岡さんは30年を振り返り、希望を語った。
プロをコーチに練習開始!キッズテニススクール
風越公園総合体育館で毎週水曜日に行われている、6歳〜小学3年生が対象の「キッズテニススクール」。南ヶ丘の「軽井沢インドアテニスコート」で講師を務めるプロテニスコーチの池城昌史さんをコーチに子供たちは練習に励んでいる。この日は小学2、3年生の子どもたちが3人集まり、ストロークやボレー、サーブなどの練習を行った。「テニス人口を増やしたくて始めた。この教室では楽しみながらボールやラケットの感覚に慣れてもらいたい」と池城さん。練習後子どもたちは「テニスが好き!ボールを打っているときが楽しい!」と笑顔を見せた。時間は17:30〜18:30。月謝7,200円。TEL0267-48-0077
フランス文学者 朝吹登水子 さん

あさぶき とみこ (1917-2005)
フランス文学者 1917年東京生まれ。女子学習院中退後、フランスへ渡りブッフェモン女学校、パリソルボンヌ大学で学ぶ。1955年F・サガンの『悲しみよこんにちは』を翻訳。ボーヴォワールの翻訳など多数の翻訳を手掛ける。自伝的小説『愛のむこう側』『もうひとつの愛』など小説やエッセイも多数。1958年、第11回カンヌ国際映画祭の審査員を務める。2000年、フランス政府よりレジオンドヌール勲章シュヴァリエを叙勲。
フランス文学者 1917年東京生まれ。女子学習院中退後、フランスへ渡りブッフェモン女学校、パリソルボンヌ大学で学ぶ。1955年F・サガンの『悲しみよこんにちは』を翻訳。ボーヴォワールの翻訳など多数の翻訳を手掛ける。自伝的小説『愛のむこう側』『もうひとつの愛』など小説やエッセイも多数。1958年、第11回カンヌ国際映画祭の審査員を務める。2000年、フランス政府よりレジオンドヌール勲章シュヴァリエを叙勲。
2018年は日仏国交160周年の年にあたる。軽井沢でフランス関係の人物といったら、すぐに名前があがるのが朝吹登水子さんだ。サガンやボーヴォワールの翻訳で知られる朝吹さんは、日本とフランスの架け橋となり、両国の文化を伝えて来た。
1984年に原稿をお願いしたときは、まだお会いしたことはなかったが快く引き受けていただいた。届いた原稿には軽井沢の古き良き時代の夢のような物語が綴られていた。翌年には、戦前・戦後の記憶も辿って詳細に記した朝吹さんの軽井沢の思い出が、美しい写真と共に『私の軽井沢物語』として出版された。軽井沢の別荘史として、今も多くの人々に愛読されている。
取材を通して、私は朝吹さんから軽井沢の奥深さを教えていただいたように思う。軽井沢での本来の別荘生活とは何か、どのような人々が軽井沢でどんな別荘の過ごし方をして来たか、朝吹別荘で出会った人々との交流、ヴォーリズ建築や暖炉のこと...など、数えればきりがないほど取材に協力していただき、様々な軽井沢の魅力を伝えることができた。朝吹家で出会った人と名刺交換すると、名刺には肩書がなく名前だけという人が多かった。あとで朝吹さんに聞いてみると、「元国連大使の人よ」「徳川家の方よ」など、なかなか出会えない人物だった。そういう方に「軽井沢文化人録」のページに登場していただいたこともあった。
「避暑地軽井沢100年」の1986年に発行した写真集『軽井沢の別荘』では、ヴォーリズ建築の朝吹家別荘(睡鳩荘)を撮影させていただいた(このときの写真は7月下旬発行の軽井沢ヴィネット123号にも掲載)。両親が愛したこの別荘を朝吹さんはとても大切に思っていた。「私が元気なうちはいいけど、その後はどうなるかわからない」と睡鳩荘の行く末を心配されていた。現在、タリアセンの塩沢湖畔に移築され、多くの人たちが集うようになったことは、天国の朝吹さんが一番喜んでいるのではないかと思う。(広川小夜子)
1984年に原稿をお願いしたときは、まだお会いしたことはなかったが快く引き受けていただいた。届いた原稿には軽井沢の古き良き時代の夢のような物語が綴られていた。翌年には、戦前・戦後の記憶も辿って詳細に記した朝吹さんの軽井沢の思い出が、美しい写真と共に『私の軽井沢物語』として出版された。軽井沢の別荘史として、今も多くの人々に愛読されている。
取材を通して、私は朝吹さんから軽井沢の奥深さを教えていただいたように思う。軽井沢での本来の別荘生活とは何か、どのような人々が軽井沢でどんな別荘の過ごし方をして来たか、朝吹別荘で出会った人々との交流、ヴォーリズ建築や暖炉のこと...など、数えればきりがないほど取材に協力していただき、様々な軽井沢の魅力を伝えることができた。朝吹家で出会った人と名刺交換すると、名刺には肩書がなく名前だけという人が多かった。あとで朝吹さんに聞いてみると、「元国連大使の人よ」「徳川家の方よ」など、なかなか出会えない人物だった。そういう方に「軽井沢文化人録」のページに登場していただいたこともあった。
「避暑地軽井沢100年」の1986年に発行した写真集『軽井沢の別荘』では、ヴォーリズ建築の朝吹家別荘(睡鳩荘)を撮影させていただいた(このときの写真は7月下旬発行の軽井沢ヴィネット123号にも掲載)。両親が愛したこの別荘を朝吹さんはとても大切に思っていた。「私が元気なうちはいいけど、その後はどうなるかわからない」と睡鳩荘の行く末を心配されていた。現在、タリアセンの塩沢湖畔に移築され、多くの人たちが集うようになったことは、天国の朝吹さんが一番喜んでいるのではないかと思う。(広川小夜子)
昆虫目掛けて一目散! 軽井沢昆虫クラブ
「里山を楽しむ」をコンセプトに田んぼや古民家活用などの活動をしている軽井沢ネイチャークラブは春から秋にかけて月に1度、昆虫と触れ合う「軽井沢昆虫クラブ」を実施している。6月3日に行われたクラブには東京や軽井沢町内から子ども6人が集まり、塩沢地区の荒熊農道と千ヶ滝に虫採りに向かった。昆虫を見つけるとまっしぐらに走り、虫網で採集。その後の勉強会では「あるなしクイズ」を交えて昆虫について学び、部長で高校1年生の五井野響太郎さんが標本の作り方を子どもたちに実演して見せた。五井野さんは「みんなで昆虫と楽しくふれあいたくてクラブを立ち上げた。どんな人でも参加して、昆虫好きな人はさらにのめりこんでほしい」と話している。
昆虫クラブは全国からHPで参加者を募集している。次の活動は7月16日。問い合わせはTEL080・5140・1418


- 127年目の軽井沢Vol.1~5
- 127年目の軽井沢Vol.6~9
- Essay 小宮山洋子(ジャーナリスト)
- EVENT REPORT
- FRESH Karuizawa 20's
- FRESH Karuizawa 20's 第4回佐々木織さん(29歳)
- FRESH Karuizawa 20's 第5回佐々木織さん
- Karuizawa Kids
- Karuizawa Report
- 「軽井沢で狂言10周年」を支えてきた井上燎治さんに聞く
- 『軽井沢町自然保護審議会』って何?
- お料理好きマダムのCOOKING
- この秋読みたい軽井沢ゆかりの本
- その軌跡と功績をたどる-軽井沢高原文庫30周年-
- テタンジェウィーク in Karuizawa開催
- フレンチトースト
- 世界各地で活躍する軽井沢ゆかりの人 -街角interview-
- 南軽井沢・発地メガソーラー
- 堀辰雄文学記念館の前に、なぜ本陣の門が?
- 御嶽海の活躍で注目 軽井沢町出身力士「大昇」って?
- 時の流れを超えて、あの歴史的有名人が語る
- 東日本大震災から8年
- 森山良子さんインタビュー
- 藤巻町政10年、住民有志アンケート
- 読書の秋 いま読みたいこの1冊
- 軽井沢が見える万華鏡① No.1~5
- 軽井沢が見える万華鏡② No.6~10
- 軽井沢が見える万華鏡③ No.11~15
- 軽井沢が見える万華鏡④ No.16~20
- 軽井沢が見える万華鏡⑤ No.21~25
- 軽井沢が見える万華鏡⑥ No.26~30
- 軽井沢が見える万華鏡⑦No.31~35
- 軽井沢で出会った人々 vol.9
- 軽井沢で出会った人々 vol.01
- 軽井沢で出会った人々vlo.11
- 軽井沢で出会った人々vol.10
- 軽井沢で出会った人々vol.14
- 軽井沢で出会った人々vol.15
- 軽井沢で出会った人々vol.16
- 軽井沢で出会った人々vol.4
- 軽井沢で出会った人々vol.5
- 軽井沢で出会った人々vol.6
- 軽井沢で出会った人々vol.7
- 軽井沢で楽しむ食の秋
- 軽井沢の文化遺産は守れるか①
- 軽井沢の文化遺産は守れるか②
- 軽井沢の文化遺産は守れるか③
- 軽井沢の文化遺産は守れるか④
- 軽井沢の文化遺産は守れるか⑤
- 軽井沢の文化遺産は守れるか⑥
- 軽井沢クマ物語
- 軽井沢クラフトビール
- 軽井沢ライフ探訪