検証2 南軽井沢・発地メガソーラー

ph_201505_05.jpg南軽井沢・発地メガソーラー建設地。
(2015年4月撮影)
3万坪の敷地は、
ほぼ全ての木が伐採された


  4月23日、現地へ行ってみると、道路に沿った木々はすっかりなくなっていた。わずか数本残った木も高さ2mくらいのところでバッサリ切られている。軽井沢新聞が行ったアンケート調査に対して「『3万坪の樹木が切られ』というのは間違いだ。敷地境から10m後退する所は木を切らない」と怒鳴った自然保護審議会の委員がいたが、一目瞭然、すっかり木が切られたことはひと目でわかる。生活環境課の担当者(事務局)にこの写真を見せると、「太陽光発電なので、太陽光が必要な部分は切ったとしてもやむを得ない。10m後退の部分はなるべく木を残すように協議はした」と説明する。しかし、そこには切り株が幾つも残っていた。
議事録から見えるもの

 自然保護審議会の議事録を情報公開請求して取り寄せ、目を通した。賛成の意見としては「軽井沢町は再生可能エネルギー推進の町であり、設置基準にあっているなら認めるべき」「馬取地区の地域住民の経済行為や土地の有効利用を考えるべき」という意見である。また、反対の意見としては「3万坪の大規模開発を簡単に考えるべきではない」「この地域は里山の美しさを守るべき」などがあがった。
 自然や動植物、環境への影響を懸念する具体的な意見は、議事録を読んだ中ではほとんど目にすることがなかった。「動植物の生存についてはいかがでしょうか」という質問があったが、同会事務局は「地元の区長と造園業者が調査したところ『ヤチダモ』という湿地を好む植物が主でシダ類が生息して希少植物はないという報告を受けている」というだけで終わっている。湿地や湿原は水生生物や多様な動植物が生息し、それを餌とする鳥類の重要な生息場所となっていることは今や常識である。自然保護審議会というなら、もっとこの部分は追及すべきことだろう。環境を考えて規模の縮小を提案した委員がいたが、事務局は「隣地から10m離隔距離を取り、敷地の60~65%しか利用できないよう縮小させた」と返答した。これは縮小させたのではなく、設置基準に合わせただけの当然の決まりであり、敷地全体を縮小させるべきという議員の意見に答えていない。
 景観について事務局は「周囲を緑で囲うため望見できないから問題ない」と言う。しかし「周りの山から見る人はいくらでもいるのに、設置していいのか」と疑問を投げかける委員もいた。
 最後に述べた委員の言葉が結論を促した。「私は農業をやっていたからわかるが、この土地は農業には向かない。水はけが悪く根腐れして、馬取の人たちは代々苦労してきた。このような場所で少しでも利益の上がることがあると馬取の方が決断したことなら賛成すべきではないか」。
 採決は反対2名、賛成9名、保留1名という結果になった。(出席者は16名だが、官公庁からの委員は採決には加わらない)  議事録から見えたものは、「自然保護」ではなく「地元の経済優先」ということだった。(広川小夜子)

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