


Kaleidoscope 軽井沢が見える万華鏡 No.17
Kaleidoscope
2年前の秋、「ウイン別荘が工事している。売りに出されるのかも...」という情報が入り、あわてて様子を見に行きました。
「ウイン別荘」とは軽井沢に現存する数少ない明治時代の建物の一つ。アメリカ人宣教師ウイン・トーマス・クレイが建て、後にアイルランド文学の翻訳者で歌人の片山廣子が夏を過ごした別荘としても知られています。片山廣子は、芥川龍之介がその才能を認め心惹かれた美しく聡明な人物。片山廣子母娘と交流があった堀辰雄も訪れているという文学者ゆかりの別荘です。文芸評論家の吉村祐美さんは「文学的にも大切な軽井沢の文化遺産。絶対、残さなくてはいけない別荘」と断言します。
しかし、これまで一度も雨戸が開いているのを見たことがなく、「今でも別荘として利用されているのだろうか、利用されていないなら、いつ壊されるかわからない」と、ずっと心配していました。
2年前に屋根の工事を見たとき思わず駆け寄り、作業をしている人に「売りに出ているって、ほんと?」と問い詰めてしまいました。その人は笑って、「持ち主の人はこの別荘を大切にしているよ。今年は幾らと、予算を組んで修理をしているんですよ」と言い、「こんなこと、本当は軽井沢町がするべきことなんだよね」とも。この別荘の歴史的価値をよく知っている工務店の人でした。
そしてこの夏、偶然通りかかると、ウイン別荘に灯りが点いているので思わず立ち寄りました。所有者のUさんは突然の訪問にもかかわらず、「この別荘が大好きなので、売りに出されないか心配していたんです」という私の話を聞いて、快く家の中へ通してくれました。建物の中は白い木の壁で、想像していたのとは全く違う明るい雰囲気。購入したときから変えずに使っているそうです。お洒落なインテリアは、当時としてはかなり斬新なデザインの別荘だったことでしょう。
Uさんはこの別荘を大切にすると話していましたが、毎年かかる修理代はおよそ100万円だとか。古くなればなるほどもっとかかるに違いありません。個人の力には限界があり、もっと多くの人の協力が必要。軽井沢ナショナルトラストが中心になって、積極的にこうした軽井沢の宝を守るための策を講じる必要があると感じた2012年の夏でした。
(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)
「ウイン別荘」とは軽井沢に現存する数少ない明治時代の建物の一つ。アメリカ人宣教師ウイン・トーマス・クレイが建て、後にアイルランド文学の翻訳者で歌人の片山廣子が夏を過ごした別荘としても知られています。片山廣子は、芥川龍之介がその才能を認め心惹かれた美しく聡明な人物。片山廣子母娘と交流があった堀辰雄も訪れているという文学者ゆかりの別荘です。文芸評論家の吉村祐美さんは「文学的にも大切な軽井沢の文化遺産。絶対、残さなくてはいけない別荘」と断言します。
しかし、これまで一度も雨戸が開いているのを見たことがなく、「今でも別荘として利用されているのだろうか、利用されていないなら、いつ壊されるかわからない」と、ずっと心配していました。
2年前に屋根の工事を見たとき思わず駆け寄り、作業をしている人に「売りに出ているって、ほんと?」と問い詰めてしまいました。その人は笑って、「持ち主の人はこの別荘を大切にしているよ。今年は幾らと、予算を組んで修理をしているんですよ」と言い、「こんなこと、本当は軽井沢町がするべきことなんだよね」とも。この別荘の歴史的価値をよく知っている工務店の人でした。
そしてこの夏、偶然通りかかると、ウイン別荘に灯りが点いているので思わず立ち寄りました。所有者のUさんは突然の訪問にもかかわらず、「この別荘が大好きなので、売りに出されないか心配していたんです」という私の話を聞いて、快く家の中へ通してくれました。建物の中は白い木の壁で、想像していたのとは全く違う明るい雰囲気。購入したときから変えずに使っているそうです。お洒落なインテリアは、当時としてはかなり斬新なデザインの別荘だったことでしょう。
Uさんはこの別荘を大切にすると話していましたが、毎年かかる修理代はおよそ100万円だとか。古くなればなるほどもっとかかるに違いありません。個人の力には限界があり、もっと多くの人の協力が必要。軽井沢ナショナルトラストが中心になって、積極的にこうした軽井沢の宝を守るための策を講じる必要があると感じた2012年の夏でした。
(広川小夜子 軽井沢新聞編集長)


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