議会ウォッチャーの5月メモ

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 町議会の新たな正副議長が決まった。しかし残念なことに、いずれの役職も立候補は各1名にとどまり、選挙は行われず議会の同意により承認されるという形となった。こうした在り方が慣例として定着していくことは望ましくない。選挙という過程が省かれることで、議会における緊張感や透明性が損なわれてしまわないかという懸念は残る。手続きを踏むということにも、やはり意味がある。そうした意識を、共有していく必要があるのではないか。

 庁舎改築周辺整備事業については、3月に新年度予算の一部として基本設計の予算2億3千万円が可決され、現在ではすでに設計作業が進行しているとみられる。当初の想定に比べて総事業費が膨らんでいるが、基本設計料に対する疑問の声が一部あったものの、総事業費について議会で大きな反対が出ることはなく、一定の増額を許容する形で事業が前に進んでいる。実際の建設費に関する議決はこれからだが、すでに目安となる規模が示されている以上、その水準を議会が容認していると解釈する方が自然である。

 一方、住民の声は賛否さまざまで、「交流センターと一体化された、しっかりした建物が必要だ」という意見もあれば、「高すぎるのではないか」といった疑問も根強い。特にSNSでは、費用感への不信や疑念が繰り返し表明されている。しかし、その矛先は町長に対してのみに向けられる傾向が強く、議会の判断や姿勢に対して問いが投げかけられる場面はあまり見られない。地方自治は、行政と議会の両輪によって支えられているはずだ。もしその前提が住民に十分伝わっていないとすれば、議会にも何らかの説明努力が求められているのかもしれない。

 役場のDX(デジタル・トランスフォーメーション)も、一定の動きがあった。特にこの1年は、DX推進計画の策定が進み、前任の副町長が庁舎改築周辺整備事業と併せて担当してきた。ただ、計画の進行とは裏腹に、手当の未支給や徴税の見落としといった事案も表面化している。これらが偶発的なミスなのか、あるいは業務全体の管理体制や採番の仕組みに課題があるのか。議会において、そうした視点からの質疑が深められた形跡は乏しく、やや物足りなさも残る。

 町長は就任から3年目を迎え、これまでの町政の課題と向き合いながら、体制の再構築に取り組んできた。過去からの整理を引き受ける役割も担っているが、事業の進捗が見えにくく、全体にスピード感を欠く印象は否めない。住民にとっては、過去の事情というより、いま直面している課題として映るのも無理はないだろう。

 議会についても、行政の足元を確かめる視点に加え、もう一歩踏み込んだやりとりがあってもよかったのではないかと感じる場面がある。もちろん、すべての課題を見抜くことは難しいが、自らの役割を省みる姿勢があれば、その空気は住民にも伝わっていくはずだ。

 自治とは、行政と議会、そして町民・住民がそれぞれの立場から責任を持って関わる営みである。子どもの数が過去最低を更新し、少子超高齢化や社会構造の変化が進むいま、私たちは何を問い、何を選んでいくのか。その問いは、地域に関わるすべての人に投げかけられている。さて、次の一歩をどう踏み出すのか。(文・赤井信夫)

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