3年間1人の軽井沢高校野球部員 乙部鉄兵さん、最後の夏の大会へ

 軽井沢高校の野球部員として入学時から1人で活動した3年の乙部鉄兵さんが、東北信の5校による連合チームで、最後の夏の大会に挑んだ。

 7〜9年生(中学1〜3年相当)を過ごした軽井沢風越学園では、野球好きの仲間を集め遊びの延長でプレー。入学した軽高は部員がおらず休部状態と知っていたが「本格的に野球がしたい」と、入部に迷いはなかった。同学年や新入生にも入部希望者はおらず、3年間部員は1人。顧問と二人三脚で練習に励んできた。

 1・2年の夏の大会は蓼科、小海などとの連合チームで挑んだがいずれも初戦敗退。「連携の練習より、雰囲気作りにまず時間がかかる」と連合チームで勝つ難しさを痛感した。

 今年3月には松代(8人)、北部(1人)、蓼科(3人)、小海(2人)、軽井沢(1人)の5校によるチーム「東北信連合」を発足。週末に合同練習や対外試合を行い、平日は試合などで出た課題を振り返り、個人練習に明け暮れた。2006年に甲子園出場経験もある松代が加わったことでチーム力は上がり「緊張感のある中で練習できた」と乙部さん。

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 大会直前の対外試合は5連勝。波に乗って迎えた初戦(7月8日、県営上田野球場)の相手は松本蟻ヶ崎。乙部さんは3番ライトで先発出場。1、2回の相手の攻撃をゼロに抑えると、その裏に四死球とヒットなどで2点を先制。3回に追いつかれ、4回以降も失点を重ね、8回に1点を返すも6対3で敗れた。乙部さんは四球、中前安打、四球、右飛と3出塁し1盗塁も決めた。守備では得点圏にランナーがいる場面で、右中間に飛んだ打球に食らいついて失点を防ぐなど貢献した。

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(「縮こまらずに強気で、きた球をフルスイングのイメージ」で打席に立った。)

「やり切ったと胸を張って言える」

 2〜3年時の顧問川島準希さんはゲームセットを見届け「本当によく頑張ったと思うし、今までで一番のバッティングができていた。嬉しかった」。乙部さんは試合を終え「悔しい気持ちでいっぱいだが、やり切ったと胸を張って言える」。大粒の汗と涙が入り混じる顔には、どこか清々しさもあった。高校の野球生活を振り返り「支えてくれた人、応援してくれた人には感謝しかない」と話した。

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観客席に向かってあいさつする乙部さん(中央)ら。相手チームからは「連合らしくない」と戦いぶりを讃えられた。

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