議会ウォッチャーの10月メモ
旧三笠ホテルがリニューアルオープンした。明治期に建てられた純西洋式木造ホテルは国の重要文化財であり、長らく保存修理工事が進められてきた。当初13億円と見込まれた総事業費は、工事の長期化や物価高騰の影響で最終的に約24億円強へと倍増した。やむを得ぬ事情があったにせよ、多額の公費を投じた以上、観光振興にとどまらず、地域の学びや文化にどう還元していくかが問われる。
令和7年6月会議では、同ホテルの指定管理者をめぐる議案が審議された。三者の応募の中から、文化財施設の運営実績と事業計画が高く評価された株式会社日比谷花壇が選定された。文化財の管理を誰に託すかは、単なる業務委託ではなく、町の将来像や住民生活にも直結する重要な判断である。地域団体の応募は主体性の表れとして評価されるべきだが、文化財という特殊な領域を担うには、専門性と人材の継続的な育成が欠かせない。
令和8年度には、町内の指定管理施設が更新期を迎える。町ホームページでは令和元年度から6年度までの管理運営状況と評価シートが公開され、毎年更新も行われている。しかし、その評価基準や指標はおおむね定性的で、成果の達成度を測る明確な水準やKPIの設定は十分とは言い難い。様式上の公開にとどまらず、施設ごとの目的に即した評価体系の整備と、町民が納得できる水準での成果検証が求められる。
指定管理者制度の本来の目的は、民間の知恵と柔軟性を生かして、より良い公共サービスを実現することにある。だが、その効果を町民が実感できなければ制度の信頼は揺らぐ。町は、評価の「形式」ではなく「実質」を高め、選定から再指定までのプロセスを、成果検証を伴う透明な仕組みとして運用していくことが重要である。(文・赤井信夫)




