【お店の履歴書】軽井沢駅前で地元客の 衣類や美容を支え続ける ますや

 軽井沢の駅前で衣類や化粧品などの販売とエステサロンを営む「ますや」。創業の詳細は残っておらず「100年以上前からこの場所で店を続けている」という話が口伝されている。「私がお嫁に来た時は駅の周りに何もなくて、うちのお店しかなかったの」と話すのは小林味世子さん。7歳の時に東京大空襲で上田に疎開し学生時代を過ごした。中学校の先生から「商売に向いている」と紹介され嫁いだのが「ますや」だという。味世子さんは「もう少しお洒落な店にしたい」と、化粧の勉強をして町内では先駆けとなる化粧品を導入。女性客が集うようになった。

 1972年のあさま山荘事件の時、機動隊の衣類を提供したのも「ますや」だ。「『今から警察が行くから下着や靴下を用意して』と電話があって、とにかく店の衣類をかき集めて全部持って行ったのよ。お店が空になるくらい」と、当時を振り返る。

 現在店に立つのは味世子さんの息子、徹さんと裕子さん夫妻。東京で働いていた夫妻は2002年に軽井沢へ戻り、店に入った。「母が築いた化粧品を受け継ぎながら、10年前からはエステを始めました。昔からだと思いますが、お客様は地元の方がほとんどです。『旅行に行ったから』とお土産を持ってきてくれる方も多くて、旅先で私たちを思い出してくださったと思うととても嬉しいです」と、地元客とのつながりも大切にするスタイルを引き継いでいる。「元気な限り店を続けたい」と話す徹さん夫妻は、100年以上続く場所でこれからも温かく来店客を迎える。

軽井沢町軽井沢東2-1 TEL0267-42-2108

2312_shop_rirekisyo01.JPG

現在店を切り盛りする小林さん夫妻。町内の学校の制服なども扱い、地元を支えている。

2312_shop_rirekisyo02.JPG

貴重なチラシが店に残されていた。「いつのチラシかわからないですが、金額が「銭」だから明治頃かな。電話番号も108番だけなんですよ」。

関連記事