【お店の履歴書】時代の変化に応えて 県産酒をつなぐ

キリマン酒店

 7月27日にリニューアルオープンしたキリマン酒店。「ゆっくりとお酒について話せる場を作りたかった」と改装のきっかけを話すのは、3代目の土屋好生さん、純子さん夫妻だ。創業時は好生さんの祖父母の治平さん、かつしさん夫妻が昭和4年に開いた食料品店だった。「両親の代では、別荘にひと夏分の食料などを届ける注文を受けていました。私たちの代では民宿が増え、大量のビールなどを何軒もの宿に届けたこともありました」と好生さんは振り返る。

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(国道18号に面したシックな雰囲気の店舗。)

 自身の代に転機が2度あった。1度目は酒類販売業免許の緩和だ。「どこでも買える時代になったからこそ、うちならではのものを」と夫婦で話し合い、長野県産のお酒に力を入れることに。県内各所の造り手を訪ねて話を聞き、取引を始めた。造り手の思いを客に伝えることが、店の大切な役割にもなっていった。

 2度目はコロナ禍だ。外出自粛で客足が途絶える中でも訪れてくれた常連客に「涙が出るほどうれしかった」と純子さんは思いを口にした。その一方で広がったのは、家飲みの需要だ。「気になっていたが入ったことがなかった」という新しい来店客が増え、そこに県産酒の魅力が伝わった。ピンチがチャンスに転じた瞬間だった。

 今は4代目の洋輔さんも加わり、県外の造り手のもとへも足を運んでいる。両親から受け継がれた形で、洋輔さんもまた「酒の数だけある物語」を来店客に届けている。

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(「来店客がじっくり好みの酒を選べるように」と、座って試飲できるスペースを新装した。)

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