【お店の履歴書】旧軽井沢で革と人をつなぐ「きくわん舎」
旧軽井沢で革と人をつなぐ「きくわん舎」
「大事に使ってくれてますね。このデザインは20年以上前かな」と、持ち込まれたパスケースの修理をしながら、オーナーの吉田博さんは来店客に話しかける。
昭和50年に友人と原宿の露店で革製品販売を始めたのが、きくわん舎のスタートだった。中野、吉祥寺と移転を重ねる中「(紳士服・婦人服販売の)タカキューの店頭に出さないか」と声をかけられ出店。露店を始めて2、3年後には「夏の1シーズン、軽井沢の店頭でやってきて」との依頼があり、軽井沢デビューにつながった。その後、現在の店舗が空き、腰を据えて店舗を構えることになった。
(写真=「買ってくださった方には焼き印でネームを入れます」と吉田さん。)
キーホルダーから始まった店だが、小物やカバンへと商品を拡大。「デザインや形状のリクエストではなく、お客様が『どのように使いたいか』を聞いて作ってきた」という。時代の移り変わりで店舗や客層の変化を見てきた吉田さん。外国人観光客も増えたが「スマホの翻訳は使うが、革の説明や希望を聞くことは変わらない」と、人とを大切にする思いがにじむ。
(写真=「店名の置物もお客さんが作ってくれた」と、店内にも人との繋がりが見える。)
旧軽井沢銀座商店会では会長を務め「ただ連絡係を頼まれて始めたのに、イベントや音楽会などもやってきた。街のためというより、楽しいからね」と目を細める。人との関わりを大事にする吉田さんは「これまでのどんな小さな出会いも、何かひとつでも欠けたら『今この時』はないから」と思いを述べた。
今後も「淡々と仕事をしていきたい。お店で仕事しながら死ねたら本望だな」と話すも即座に「それじゃお客さんが困っちゃうか」と笑う。
(写真=旧軽井沢銀座商店街を入り徒歩5分ほど。店頭にも商品が並ぶ。)
軽井沢町軽井沢648 TEL0267-42-3583




