建築家・東京芸術大学名誉教授 藤木 忠善 さん

新藤木顔写真.jpg 藤木 忠善 さん
 東京芸術大学卒業後の1956年から64年まで、坂倉準三建築研究所に在籍。「ル・コルビュジエの建築作品」の一つとして2016年、世界文化遺産に登録された国立西洋美術館の建築に携わった。コルビュジエが描いた基本設計をもとに、より詳細な実施設計や、現場監理を担当した。
「コルビュジエは『古きから学ぶ創造の場』として、美術館を設計しています。ピロティなどの外見より、その思想が大切だと感じました」と振り返る。
 世界文化遺産登録は「喜ばしいこと」とする一方で、ショップやロッカーのスペースが拡張され、館内が当初と大きく様変わりしたことに歯痒さも滲ませる。
「もともとは静かに作品を観る、可愛らしい美術館。できることなら、原設計に戻してほしい気持ちもある」。
 大学の恩師、建築家の吉村順三氏の薦めで1969年、軽井沢に土地を手に入れるも、多忙な日々が続き、居を構えたのは96年のこと。三井家から譲り受けた愛宕山麓の高台に、自身が設計したギャラリーのある家をマウンテンボックスと名付け、今は通年で暮らしている。
 軽井沢について「静かなリトリートの時間を過ごせる場所と、賑やかで都会的なところを行き来できる。春夏秋冬楽しめるイヤーラウンド・リゾート」と評する。
 1933年東京生まれ。軽井沢が大好きだった妻で、布工芸家の藤木結花さんが2015年2月に軽井沢で他界してからは、この地が故郷に。10代で始めたスキー歴は約70年。シーズン中は、軽井沢プリンスホテルスキー場へ通う。午前中をゲレンデで過ごし、昼前にはスキー場を後にする。
「毎日のジョギングのような感覚。次はもうちょっと上手く滑ろう、と向上心を持って取り組んでいます」。
 日本職業スキー教師協会で、スキー教師の理論講師を長年務めた。83歳の今も腕前は健在だ。
「道具もよくなったうえ、ゲレンデの整備も完全で若い頃より上手くなった感じ」。夏場は体力が落ちぬよう、エアロバイクや筋トレを欠かさない。
 設計を担当した新宿西口広場が2016年で竣工50周年。苦労してまとめた書籍『新宿駅西口広場ー坂倉準三の都市デザイン』が17年1月に出版されることになり「ホッとした気分で新年を迎えられそう」。

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