作家 下重 暁子 さん

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「個は認め合っても、家族には期待しない」

 2015年に発表した著作『家族という病』が、60万部を超えるベストセラーに。お父さん、お母さん、子どもという家族の中の役割分担ではなく、それぞれの個を認め合う家族の姿を提唱した。

 「みんなやっぱり家族に悩んでいる。私の本を読んで『肩の荷が下りた』という意見が一番多かった」

 6月に独自の夫婦観を率直に綴った『夫婦という他人』を上梓した。今年で結婚生活45年。「期待通りにならないと、落胆が大きくなり愚痴や不満につながる」と、パートナーとは最初から期待し合わない間柄を続ける。ただ、互いの自由はしっかりと認め合う。

 「つれあいが数年前から、家の中で花を活けることに凝り始めて、そのセンスがいいのなんのって。40年以上一緒にいても、まだ新しい発見ってあるものです」。

 著書を出すたび、批判的な意見も出るが「問題提起と思って書いているので、反論も大いに結構。いろんな人がいるんだし、違う意見があっていい」。

 フィクションの執筆に取り組みたいと思っている。

 「まずは恋愛をテーマにしたものを書く。早く書いておかないと、人生の締め切りが来ちゃう(笑)」

 大学生の頃から、NHKアナウンサー、民放キャスター時代も、毎年一回は必ず軽井沢を訪れた。

 「春の頃が好きで、落葉松の芽吹きを見るためによく来ていました」

 90年代、軽井沢に家を購入しようと思い立ち、何十軒と見て回った。気に入った物件と出合えず諦めかけていた矢先、今の家と巡り合う。音楽教育家のエロイーズ・カニングハムが暮らした吉村順三設計の建物だったと、あとから知った。

 「外観は質素ですが、中に入ると、風の音が通って、雨のにおいがして、外に自然が広がって...。この豊かな空間はなんだろうと、値段も聞かず『ここに決めます』と即決していました」

 江戸時代の農民や商人が祝布団や大風呂敷に使った藍木綿の筒描きを50年ほど前から収集し、百数十点所有。そのコレクション展を南ヶ丘美術館・三五荘資料館で9月2日まで開催している。

 「江戸時代の職人がつくる芸術作品。二つとして同じものがないのが面白い」

 著書のタイトルにもなった「極上の孤独」をテーマにした講演会(無料)も8月19日、同館で行われる。

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