スペイン料理文化アカデミー主宰 渡辺 万里 さん

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 「美食リゾート軽井沢プロジェクト」を2016年に立ち上げ、マルシェや料理イベントを通じ、信州の食の魅力を軽井沢から発信している。とりわけ、生産者と料理人のネットワーク作りには力を注いできた。

 「料理人に食材を使ってもらうことが、生産者の大きな自信になる。よりいいものを作らなきゃって、モチベーションも上がると思うんです」

 withコロナの時代は、これまでと違った角度で、食と向き合う必要があると感じている。

 「美味しいということ以前に、サスティナビリティ(持続可能性)や、自給自足、食の安全ということが、大事になっていくかもしれない。ここで仕切り直して、改めて『食』について考え、提案していきたい」

 立ち上げのときからプロジェクトに関わる戸枝忠孝シェフ(レストラン トエダ)が昨年、世界最高峰の料理コンクール「ボキューズ・ドール2021」の日本代表に選ばれた。来年1月の本選に向け、広報や資金集めの面などでサポートしていく。

 「今までの日本代表シェフは、所属ホテルなどの支援があったけど、個人では超大変。温かく見守って、地元をあげて応援できたらいいですね」

 学習院大学法学部在籍時、スペインの政治について学んだ。語学研修で初めて訪れたスペインの地で、「食」に魅了された。

 「もともとが食いしん坊。とにかく料理もワインも何でもおいしかった。『食』を文化として学びたいと、方向転換していきました」

 20、30代は、一年の約半分をスペインで過ごした。各地のレストランを食べ歩き、チャンスがあれば一般家庭も訪ね料理を教わった。

 「フィールドワークですね。胃袋を使っているから、ストマックワークなんて言う、偉い先生もいましたね」

 1989年に「スペイン料理文化アカデミー」を開設。執筆、講演などを通じ、スペインの食文化を日本に伝えてきた。東京と軽井沢で料理教室も開いている。

 両親に連れられ、小学生の頃から軽井沢を訪問。亡き母がよく口にした「少しでも長く軽井沢にいたい」という言葉が、今は身にしみてわかる。

「私にとっての安らぎの場。人と人の繋がり、距離の近さも魅力です」

 築40年以上になる父が建てた山小屋を、今も大切に使っている。

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