【軽井沢人物語】写真家 野辺地ジョージ さん
金融トレーダーから転身 写真を通じ地域活性、慈善活動も
公募写真の入選作品を公園などに屋外展示する「軽井沢フォトフェスト」を2022年に立ち上げ、この春3回目を迎えた。ターポリンと呼ばれる布に印刷した200枚の写真を、各会場で5月25日まで展示している。
「風にゆらゆら動いたり、木漏れ日が映り込んだりと、展示風景が1つの新しい作品になっています」
カナダのブリティッシュ・コロンビア大学人文学部を2002年に卒業後、外資系証券会社のトレーダーとして、東京やニューヨークで活動。何百億円というお金を動かし成果を追求する毎日に「バーンアウト(燃え尽き症候群)になってしまった」。
休養中にふらり訪ねたブルックリンの写真祭に刺激を受け、ワークショップに通ううち「写真表現の奥深さにハマってしまった」。12年間続けたトレーダーを辞め、巨匠写真家のもとを訪ねるなど約3年間、中古のSUVでアメリカ西部を旅した。
17年から日本を拠点に活動。国内外で個展を開き、国際的な賞も多数受賞。日本とカナダの修好95周年を記念し昨年、在日カナダ大使館高円宮記念ギャラリーで開いた写真展では、日本とカナダの写真85点を展示した。
「会場を世界地図に見立て、左に日本、右にカナダ、中央は両国の写真を混ぜ合わせて波のように配置しました。写真をどう見せるか、演出を考えるのも1つの楽しみです」
20年に軽井沢を旅行で訪れ、環境に魅了された。すぐ物件を探し始め、翌21年春に移住。四季を彩る自然と多様なレストランに美術館、都会へのアクセスの良さ--。これまで50カ国、様々な都市を巡ってきたが「軽井沢のような環境が整っている街は、世界でも10あるかないかだと思う」。
コロナ禍に国際的な写真家のオンライン講演会(全35回)を企画し、視聴者から集めた7万ドルを医療関係者などに全額寄付。昨年は能登半島地震の被災地支援のため、寄付者に自身の能登の写真を贈るプロジェクト「Art for Noto」を立ち上げるなど、慈善活動にも意欲的だ。
「僕自身、人生に行き詰まって写真に救われた。写真を通してできることがあれば、 社会貢献したい」
1980年東京生まれ。初めての写真集刊行に向け、少しずつ編集を始めている。