脚本家 吉田 紀子 さん

紀子さん写真1.jpg 吉田紀子さん
 テレビドラマ「悪魔のKISS」「恋を何年休んでますか」「Dr.コトー診療所」シリーズ、映画「涙そうそう」など、数々の脚本を手がける。高校生のときに倉本聰さん脚本のドラマ「前略おふくろ様」を見て、「こんな仕事がしたい」と憧れた。明治大学文学部卒業後、一旦は証券会社に就職するも2年で辞め、倉本さんが創設した脚本家と俳優の養成所「富良野塾」(北海道富良野市)へ。

 バブルに湧く東京から一転、過疎地で塾生らと2年間、共同生活を送る。授業料をとらないかわりに、倉本さんは自分たちが住むログハウスの建築、近所の農家で野菜作りのアルバイトを課した。

 「価値観が変わりました。それまで東京で育ち、農家の人の暮らしとか、野菜がどうできるかとか、全く知らなかったので...。東京を俯瞰して見られたし、世界観が広がりましたね」

 地平線の向こうまで続く畝に、玉ねぎの苗を一個ずつ植え付けた富良野の日々を、今でもふと思い出す。「脚本もコツコツ一行ずつ。いつかは終わる、と自分を励ますんです」

 離島で奮闘する青年医師を描いた漫画原作のテレビドラマ「Dr.コトー診療所」は、シリーズ化され反響も大きかった。医学部を目指すきっかけになったという学生の話も耳にし「そういう話を聞くのは嬉しいですね」。

 ここ数年は時代劇のオファーが増加。忠臣蔵を題材にした時代小説『四十八人目の忠臣』(諸田玲子)原作、9月放送開始の連続ドラマ(NHK土曜時代劇18:10~・全20回)の脚本に取り組んでいる。

 東京の暑さから逃れるため2007年から、夏場は軽井沢に仕事場を借りて滞在。14年に家を建て、ご主人の花井雄造さん、ラブラドールレトリバーのボンボンと移住。花井さんは広告制作会社を辞め、発地でトマトや玉ねぎなどを栽培する花井農園を経営する。朝早くから農園に出るご主人に対し、夜型でいつも明け方に就寝するため「うちは2交代制で24時間営業なの」。

 夕方の犬の散歩や庭いじりでリフレッシュ。「自然もきれいだし、日常生活の延長で、気分転換できるのがいいですね」。ご主人の農作業は「昔を思い出してやりたくなるんですけど、自分の仕事に支障が出るので」と、手伝うことはほとんどないという。


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