舞台朗読家・女優 幸田 弘子 さん

舞台朗読家・女優 幸田 弘子 さん 舞台朗読家・女優 幸田 弘子 さん
 源氏物語を始めとする古典や詩、現代文学など、幅広い作品の朗読を続けて約50年。

 「舞台朗読」という表現を確立した功績が評価され、芸術祭優秀賞、芸術選奨文部大臣賞などを受賞している。

 朗読の楽しさに目覚めたのは小学校低学年。体操の授業が雨で中止になると、担任の先生は一人ひとり、好きな本を声に出して読ませた。

「最初はみんなで順番に読んでいたんですけど、いつからか私が毎回朗読することになって...。上手かったんでしょうね(笑)。聞かせるのも、朗読して褒めてもらうのも、そこから好きになりました」

 1953年、NHK東京放送劇団の5期生として入団し、放送や舞台で活躍。ラジオやテレビの教育番組で朗読を続けるうち、聞いている人の反応を直接感じたくなり、舞台朗読を始めた。

「すばらしい文章を、作家が伝えたかったように読むのはとても難しい。完全に作品を解釈して、一つひとつの言葉を深く心に刻み付けてから声にしないと、聞き手には届きません」

 明治期の作家、樋口一葉作品の朗読はライフワーク。その魅力について「とても美しい。テンポがいいので、音として聞くと不思議に入ってきやすい」と話す。  2001年、クモ膜下出血で倒れた。術後目を覚ましてまず、一葉の『たけくらべ』を口に出してみると、「最後まで楽々と読めたんですよ。何も変わっていない。大丈夫。と安心しました」。

 軽井沢の別荘で避暑生活をするようになって60年以上。作品を朗読したことが縁で、作家の中村真一郎さん、辻邦生さんとも親しくなり軽井沢でも交流した。ドライブが趣味で、運転しなかった中村さんに誘われ、あちこちよく出かけた。

 「先生の『行こうよ』は、クルマに乗せてほしいということ。色々してくださるお話が、小説を聞いているようで楽しかった」  堀辰雄作品を、軽井沢大賀ホールで何度か朗読した。堀夫人の多恵子さんが舞台を白い花でいっぱいに飾ってくれたことが忘れられない。

「舞台に出るまで全く知らなかったので驚きました。私が堀先生の作品を朗読することを、大変喜んでくださっていました。懐かしいですね」  12月18日には武蔵小金井の宮地楽器ホールで、太宰治作品を朗読することが決まっている。

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