八木書店 代表取締役社長 八木 唯貴 さん

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祖父の八木敏夫さんが1934年、神田神保町で創業した八木書店を継ぐ3代目。古書を販売する上階に住まいがあり「本の匂いを嗅ぎながら育ちました」。

 システムエンジニア、学術出版社での営業を経て1996年入社。それまでなかった営業部門を立ち上げ、全国の大学や公共図書館、博物館を巡って、専門書の顧客を開拓。全米からアジア研究の教授が集まる「北米アジア学会」にも2000年から毎年出店し、海外の大学にも販路を広げている。2010年、社長に就任した。

 古書売買のほか、新刊取次、日本文学研究書の出版なども手がける。アウトレット本(販売開始から一定期間を経て、出版社が定価販売の指定を外した書籍)の卸売事業は、業界トップシェア。200社を超える出版社の15000タイトル以上を取り扱い、近年は英米の洋書も輸入している。

 「右肩あがりの頃は、あえてアウトレット本を置かなくても、新刊書店は収益が見込めていました。最近は、新刊書店でも扱っていただけるところが増えていますね」

 昨年11月、日本初のアウトレット専門ブックショップ「PAGES」を、軽井沢・プリンスショッピングプラザにオープンした。

 「本の種類によっては、時間が経っても価値が失われないものもある。故紙化されていたかもしれない本を、より活かして行くことが私たちの使命だと考えています」

 旅行と自然が好きで、20代は北海道にはまり、30代は欧米の国立公園を巡り歩いた。東京暮らしからの脱却を夢見ていた2007年夏、旅行で軽井沢に滞在。ふらっと立ち寄った不動産屋で紹介された場所が気に入り、翌年の7月に移住した。妻、娘2人と4人暮らし。一生縁がないと思っていたゴルフは、軽井沢の友人に誘われ、いざ始めてみると夢中になった。

 「自然の中でプレーするのが気持ちよくって。朝起きて晴れていたら、『きょう行こう』って判断できる。東京だとこうはいきませんね」

 平日は東京と往復する通勤族。週末は軽井沢の店舗へも足を運ぶ。「大変さももちろんありますけど、多くのお客さまに励ましの言葉を頂き、やりがいを感じています」と、日本初のアウトレット書店の運営を楽しんでいる。

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