【軽井沢人物語】中世シチリアの謎を次々解明し、 国際的な評価を獲得

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東京大学名誉教授(西洋史学)  高山 博 さん 

 「歴史は暗記の学科」と、高校までは教科の中で一番嫌いだった。幼少期から天体物理学者に憧れるも「文系の方が就職しやすい」という周りの声に、高校の途中で文転を決意。東京大学文学部に進学した。

 イスラム世界への興味から、12世紀ごろイタリア南部に存在したシチリア王国について調べると、西洋とイスラムの多様な文化が重層し、その歴史の複雑さ、未解決の謎の多さに魅了された。

「『歴史=分かりきったこと』と思っていたけどとんでもない。もう謎、謎、謎で、ワクワクしました」

 研究書を読むのに英、仏、独、伊などの現代語を習得し、当時の公用語だったラテン語、アラビア語、ギリシャ語も学び、史料を丁寧に解読。シチリア王国の統治システムをまとめた修士論文は、従来の定説を大きく覆し、国際的にも高く評価された。

 米エール大学博士課程修了。29年間教鞭をとった東京大学では専門の西洋史のほか、国際社会の様々な情報の取得、分析法について学ぶゼミも受け持った。昨年1月には、西洋中世研究の定説を次々書き換えたことが評価され、アジア人として初めてアメリカ中世学会の海外永世名誉会員に選ばれた。

 「今の私があるのはシチリアのおかげ。自分が本気で夢中になれるテーマを見つけられたことが、一番の成功だと思います」

 軽井沢の貸別荘に5年間滞在して土地を探し、2021年に別荘を建てた。妻主導で最初は乗り気ではなかったが、今では時間を見つけ一人でも来るほどに。音楽をかけてテラスで朝食を食べるのが習慣だ。

「もう天国です。すごく幸せな気分になりますね」

 1956年福岡県生まれ。とことんのめり込む性格は、ファッションに宝塚、絵画収集、舞台芸術と、趣味でも発揮。カラオケのレパートリーは、サイモン&ガーファンクルからKing Gnuまで、歌うキーや得点も細かく記録。コロナ禍は学生たちとオンライン・カラオケを楽しんだ。

 「時間がいくらあっても足りないので、僕の好奇心を刺激する危ないテーマには、近づかないようにしているんです」 

 ゼミの教え子をインタビューするYouTubeチャンネルの収録も、軽井沢の別荘で行っている。

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