【軽井沢人物語】生活や環境の改善が及ぼす 経済的な影響を研究

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NYニュースクール大学教授(国際関係論)・元国連開発計画
福田 咲子パー さん

 10年にわたり国連開発計画(UNDP)で各国の発展の度合を指数で表す「人間開発報告書」の筆頭著者兼ディレクターを務めた。2015年の共著『社会的および経済的権利の履行』(Fulfilling Social and Economic Rights)は、世界の秩序を改善するためのアイデアが評価され、国際的な学術賞のグロマイヤー賞を受賞。

 外交官の父に伴い、10歳の時から海外に暮らす。ケンブリッジ大学などで学んだのち世界銀行へ。「年50人の採用のうち、女性は私を入れて2人だけ。女性がまだまだ働きにくい時代でした」。

 イエメン、トルコ、モロッコの農業支援に関わる。「農業の生産性が上がると、農家の収入が増えます。家庭にゆとりが生まれ、子ども達が教育を受けられるようになる。それが健康やジェンダー平等にもつながっていきます」

 その後国連に入り、UNDPで農業を基にした途上国の支援に従事した。最初の担当はアフリカ。ブルンジの副代表やニューヨークでのエコノミスト、西アフリカ局長を歴任。「様々な国を訪れました。孤立した辺鄙な村に滞在することが多く、そういう村で、人々がどう暮らしているのかを見るのが好きでした」

 2005年に国連退職後は、NYで1919年創設のニュースクール大学の教授として教壇に立つ。専門は開発経済学。健康や教育の環境がよくなることで、人がより生産的な人生を送れるようになるという思想のもと、世界の不平等や貧困、人権について研究を続けている。

 「世界の状況は20世紀になりかなり進み、教育や健康、栄養や女性の権利など人々の福祉はだいぶ改善されました。でも不平等と不正義は依然として残っています。例えば、先進国が2世紀にもわたり炭素を排出したことが気候変動につながった一方で、アフリカや南米、アジアでは農家は干ばつによる不作に直面、建設作業員は猛暑の中で働き、家族は洪水で家を失っているのです」と指摘。世界の現状は「先が見通せず、不確実な状況。他国との協力、世界との連携が不可欠です」と話す。

 祖父の代から千ヶ滝に別荘があり、幼少期は一族が集う場所だった。アメリカに暮らす現在も夏休みを利用して訪れている。今年から千ヶ滝の別荘に住民票をおいた。「ここが私の日本の家。子どもの頃からの思い出にあふれています」

 英国出身の夫と小浅間山へハイキングに行くのが楽しみ。「いつか冬山でクロスカントリーをするのが夢です」

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