【軽井沢人物語】ヴォーリズ研究の傍ら、NHKでの経験を活かし動画で別荘文化の魅力を伝える
元NHKプロデューサー
一柳 邦久 さん
ヴォーリズ研究の傍ら、NHKでの経験を活かし動画で別荘文化の魅力を伝える
ロマン・ロランなど外国の大河小説を愛読する文学少年だった。東京大学フランス文学科卒業後、NHKに入局し定年まで主としてドラマ制作に従事。思い出深い作品の一つに、真田広之が主演を務めた大河ドラマ「太平記」がある。
「真田さんはアクションが得意で、すべてを吹き替え無しで完璧にこなす俳優。『SHOGUN』など今のハリウッドでの活躍に繋がっていたら嬉しい」と語る一方、南北朝のテーマに苦労した一面も。「主人公の足利尊氏が天皇と対立する物語。史実とかけ離れたフィクションでは済まされないので、日本史の泰斗に依頼して、時代考証を厳密に行いました」
ドラマでは足利尊氏の出生地を栃木県の足利としたが、京都府の綾部説もあり、そちらを取り上げることが難しく、本編終了後にミニ紀行コーナーを設けて紹介した。以来、ドラマゆかりの地を紹介するコーナーは、今の大河ドラマまで続いている。
初任地の滋賀県大津放送局時代に、建築家で実業家のウィリアム・メレル・ヴォーリズの番組を制作し、ヴォーリズの妻・一柳満喜子の甥を取材。その娘の由美子さんと結婚し、ヴォーリズの親戚となった。「ヴォーリズは母国のアメリカの文化と日本の文化の垣根を超え、人との塀を作らない人。塀や垣根を作らない、まさに軽井沢らしい人物」と語る。今もヴォーリズの研究を続け、昨年、研究をまとめた『ウィリアム・メレル・ヴォーリズあるいは一柳米来留』を出版した。「2030年はヴォーリズ生誕150年、来日125年。ヴォーリズが日本の近代史の中で改めて再評価されるような機運が醸成されたら良いなと思います」
2008年に軽井沢でヴォーリズ建築を巡るツアーに妻が参加し、軽井沢とのつながりが生まれた。ヴォーリズ山荘のように歴史ある建物を大切にしながら暮らす人と出逢い、「古いものを守り、活かしながら暮らしている方々の素晴らしさを知りました。『良いものをお互いにシェアする』という精神が別荘文化の根底にあると思います」。自身も旧軽井沢にある大正時代築の別荘を購入し、夏を中心に過ごしている。
軽井沢での交流を通じて知った別荘文化の魅力や本質を伝えたいと、昨年からYouTube「軽井沢深掘り散歩」をスタート。NHK時代の番組制作の手腕を発揮している。




