【軽井沢新聞8月号】緑と景観を守れるか⁉ 環境タウン 軽井沢の危機(3)─急増するマンション・ホテル計画─

昨年度の新築ホテルの届出は9件

 7月上旬、南軽井沢の数万坪の敷地での大型ホテルリゾート計画が報道され大きな話題となったが、軽井沢町内ではホテルの建設計画が急増している。軽井沢町の統計によれば、旅館※の建築確認申請は令和4年と5年はぞれぞれ14件、令和6年は16件だった。※ホテル・旅館・保養所等の新増築含む。

 既に建設工事が始まっているところもある一方、計画段階のものも多い。町環境課によれば、ホテルの新築計画で事前協議を完了しているものは令和6年度は9件、令和7年度は7月31日現在で1件だという。届出された計画の全てが必ずしも直ちに遂行されるとは限らないが、今後も多くのホテルが建設される可能性が高い。

2508_news_town02.JPG

近隣住民の反対も

 軽井沢の西側エリアで計画されている大規模ホテル建設では、5月に地域住民に向けた説明会が行われた。集まった住民からはホテルの規模や運営について不安の声が多く上がり、説明会は紛糾。住民らは規模縮小や環境への配慮などを求めているが、事業主からは「2年前から計画を進め、投資してきた。法律と条例に則っているので問題はない」と返答があったという。再度の説明会を求めているが、説明会は開かず個別に対応するとし、今年9月には工事が始まる予定だ。

マンション・ホテルの制限目指す

 軽井沢の美しい自然と独自の景観を後世へ残すため、軽井沢町は3月18日に「軽井沢町の自然環境と景観を守る宣言」を発表した。この中で、マンションやホテルなどを制限する「特別用途地区」や「特定用途制限地域」の制定についても言及されている。

 「特別用途地区」は既に用途指定されているエリアの中で、さらに環境保護などを実現するために指定される地区。一方の「特定用途制限地域」は、用途が定められていない地域で、マンションやホテルなど特定の建築物を制限する場所を定めるもの。

 どのエリアを指定するかについて、町は「住民の合意が取れている地域」として景観育成住民協定や建築協定の地区を候補地として挙げている。

2508_news_town.jpg

まずは協定の区域で

 軽井沢町内では現在、建築協定が1地区、景観育成住民協定は旧軽井沢の6地区、追分の3地区で協定が締結されている。

 景観育成住民協定は長野県の景観条例に基づく制度で、建物の規模や高さ、位置、形、材料、樹木の保存や敷地の緑化など、景観を守っていくために、地域の住民がルールを定めるもの。独自のルールを盛り込むことができ、追分のある協定地区では、ホテル・旅館・簡易宿泊所・貸別荘・民泊を行わないというルールを定めている。町内で協定への賛同者が増加傾向にあり、現在250名超、面積は63ヘクタールに及ぶ。

 協定そのものには罰則などの法的強制力はないが、今後、町が「特別用途地区」などに制定することでお墨付きとなり、行政指導のもと、地域の景観が守りやすくなることが期待される。特別用途地区・特定用途制限地域は令和8年度の制定を目指して、協議が進められている(文・広川美愛)

関連記事