【軽井沢新聞9月号】緑と景観を守れるか⁉ 環境タウン 軽井沢の危機(4)─民泊の問題─
騒音やゴミの問題で、全国的にもトラブルが報告されている民泊。軽井沢では「民泊施設(貸別荘を除く*)は、町内全域において認めない」という基準を設け、静かな別荘地の環境を守ろうとしてきたが、最近「民泊」を巡るトラブルをよく耳にするようになった。*貸別荘は1ヶ月以上の契約期間で賃貸する戸建て住宅。
軽井沢は民泊禁止だが...
一般的に、戸建て住宅を宿泊施設にするには、いわゆる民泊新法に基づく「住宅宿泊事業」と、旅館業法に基づく「簡易宿所」がある。
住宅宿泊事業は長野県が管轄となる。民泊を禁止したい軽井沢町に対し、県は「住居地域は平日不可」、「5月と7〜9月は全町域で営業を制限」と規制を設けた。
こうしたルールにより軽井沢では民泊事業が成り立たないと思われたが、県には現在14施設の届出があり、大半が別荘地エリアだ。町は「町内全域で民泊を認めない」という方針だが、民泊を管轄する県が認めているという事態が起きている。
長野県食品・生活衛生課は取材に対し、事業者には軽井沢町が民泊を認めていないことを伝え指導しているとしながらも「住宅宿泊事業法に規定する要件を満たす届出が出された場合には、県として受理する必要がある」と回答。町が求める「全域での禁止」は、国のガイドラインでは法の目的を逸脱するため不適切とされていると説明した。
管理者常駐を義務化
旅館業法による簡易宿所には民宿やペンションが含まれているため、町は一概に禁止することはせず、33㎡以下の施設での宿泊営業は認めないとした。
軽井沢自然保護対策要綱では、一棟貸しやゲストハウスでも簡易宿所の場合はフロントを設置し、従業員が10分以内に駆け付けられるようにしなければならないと定められている。
夜間に管理者が不在の施設では、騒音トラブルなどが報告されていることもあり、来年10月からは同要綱が改正され、敷地内等に従業員が常駐するよう義務付けられることとなった(既存施設は3年の猶予)。
また既存の建物を利用して簡易宿所を始める際にも、町との事前協議や周辺住民への説明が条例で定められているが、手続きを踏まないまま営業を始める施設が現れ、問題となっている。こうした手続きに関する条例を守らない悪質な違反者に対し、現在、罰則化が検討されている(9月30日までパブリックコメント実施)。
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町は自然環境に関する規定の見直し・改正を行い、その一部を8月28日に公示・施行した。翌29日には、住民らが景観や自然を守るために規制効果のある条例制定を求め、署名1633筆を町へ提出。「多くの人が心配し、軽井沢を美しく守ってほしいと思っている」と代表者が語ると、環境課は「今進めている自然保護対策要綱等の改正の後押しとなる」と述べた。
住民と行政の双方でこの町の自然環境を守りたいという機運が高まっている。しかし言い換えれば、それは軽井沢が危機的状況にあることの表れでもある。(文・広川美愛)
軽井沢町民や別荘住民らでつくる有志団体「軽井沢の自然景観を守る会」が署名を手渡した。




