幕末の軽井沢宿の記録 旅籠主の日記を、ひ孫ら本に

1811_topics_busukenikki.JPG 土屋武助の日記をまとめた本(上)と原物(下)。本はA4変形281ページ。150部刷って関係者らに配った。中軽井沢図書館、追分宿郷土館などで見ることができる。
 江戸時代から明治初期にかけ、軽井沢宿で旅籠を営んでいた土屋武助(つちやぶすけ・1824ー88)の日記を、ひ孫の一色文枝さんと軽井沢文化協会の有志が本にまとめた。

 日記は一色さんの父・一條重美さんが1960年代、旧家の仏壇の奥から、木箱に入った状態で発見。古文を解読して書き写し、のちに一色さんの母・香代さんが楷書まじりでさらに読みやすいようノートに記していた。一色さんらは2011年から7年間、毎月一回集まって両親のノートから、書き下し文におこしパソコンに入力する作業を続けた。

 本には日記の原文写真と、原文に対応する書き下し文を掲載し、見出しや語意の説明、解説コラムも付けた。日記が書かれたのは1858(安政5)年から1862(文久2)年まで。

 京都宇治の新茶を将軍へ献上する「お茶壺行列」や、孝明天皇の妹君和宮の通行の記録などが記され、1860年3月3日の大老井伊直弼の暗殺(桜田門外の変)が、5日後の8日に軽井沢に伝わっていることも日記から見て取れる。

 また、1858年7月27日に「大嵐にて二手橋落ち候」、翌年6月3日に「橋入札の義。半九郎組へ」と、橋修繕の入札が完了したことなどもわかる。他にも蕎麦や野菜の作付けや収穫の記録、流行病や近所で起こった揉め事の記述も見られる。

 一色さんは「本にまとめるのは、亡くなった母の思いでもあったので、形にできてよかった」と話した。

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